科学・技術

この1週間の科学技術 国際ニュースまとめ(2025年5月3週)

注目の科学技術・イノベーション国際ニュース(直近1週間)


SpaceXスターシップ次回試験打ち上げ、FAAが免許改訂を承認

概要

米宇宙企業SpaceXの超大型宇宙船「スターシップ」の次回試験飛行 (Flight 9) に向け、米連邦航空局(FAA)は5月15日、打ち上げ免許の一部改訂を承認しました。 1 ただし、3月に起きた前回試験 (Flight 8) の爆発事故に関する調査が完了し許可が下りるまでは実際の発射はできません。 20 今回の改訂では、テキサス州ボカチカ発射場からの年間打ち上げ上限数を従来の5回から最大25回へと緩和する措置も含まれています。 3

解説

スターシップは将来の月面着陸や火星探査に向け期待される世界最大級の宇宙船ですが、今年3月まで試験飛行が2回連続で失敗し (エンジン停止後に制御不能となり爆発) 、安全対策の見直しが課題となっていました。 4 FAAによる今回の免許改訂承認は、必要な改善措置が進みつつあることを示すものです。 4 次回の試験打ち上げが実現すれば、スターシップ計画にとって重要な前進となり、将来の宇宙輸送や深宇宙探査への期待が高まっています。 4

インドの衛星打ち上げ、ロケット技術トラブルで失敗

概要

インド宇宙研究機関 (ISRO)は5月18日、新型地球観測衛星EOS-09を搭載したPSLV-C61ロケットの打ち上げを行いましたが、飛行第3段階で燃焼室の圧力低下トラブルが発生し、衛星は所定の軌道に投入できませんでした。 5 打ち上げは南部アンドラプラデシュ州のサティシュ・ダワン宇宙センターで実施されましたが、ロケットの不具合によりミッションは失敗に終わったとISRO長官が発表しました。 6 5

解説

ISROは近年、月面南極への着陸成功 (2023年) や火星周回機の打ち上げ成功 (2014年)など低予算ながら宇宙大国に迫る実績で注目されていました。 6 PSLVロケットの失敗は1993年以来数少ない「珍しい後退」で、今回を含め3度目の失敗例とされています。 6 このため国内外で驚きも持って受け止められました。 6 ISROは原因究明の委員会を設け再発防止に努める方針で、信頼性向上によって今後の打ち上げ計画へ早期に復帰することが期待されています。 9

産後うつの発症リスクをAIで予測、米研究チームがモデル発表

概要

米マサチューセッツ総合病院 (ブリガム&ウィメンズ病院)の研究チームが、出産を終えた親の産後うつ病 (PPD) リスクを機械学習AIで予測するモデルを開発し、米国精神医学雑誌に発表しました。 10 11 2017~2022年に出産を経験した約29,000人分の電子医療記録や産後うつスクリーニング結果を用いてモデルを訓練・検証し、過去にうつ病歴のない産後の人々から高リスク群を抽出しています。 12 モデルが「高リスク」と旗付けした人は平均より3倍も産後うつを発症しやすく、実際に約30%がその後うつ病を発症しました。 11 13

解説

産後うつは世界の出産経験者の約17%が患うとされる深刻な疾患で、従来は誰が発症するか事前に見極めることが難しい課題でした。 10 今回のAIモデルにより産後早期にリスクの高い母親を特定できれば、「予防的なカウンセリング療法やストレス管理策を講じる」ことが可能になると研究者らは期待しています。 14 適切な支援につなげることで母親のメンタルヘルスと家族の福祉を守り、産後うつによる育児への影響や深刻化を食い止める意義が大きいと注目されています。 14

レドックスフロー電池で世界最高効率87.9%を達成、新触媒で大規模蓄電に突破口

概要

中国の複数の大学・研究機関からなるチームが、大型蓄電システムとして注目されるレドックスフロー電池(RFB) のエネルギー効率を87.9%に高め、かつ850サイクルの長寿命動作を実現することに成功しました。 15 この成果は最新の触媒電極材料の開発によるもので、研究論文は5月に英誌Nature Communicationsに発表されています。 15 従来のRFBは配管やタンクで電解液を循環させる構造上、大規模な電力貯蔵に向く一方でエネルギー効率の低さが課題でしたが、開発チームは2次元材料(モリブデン硫化物のナノシート) にコバルト原子と硫黄欠陥を導入した新規電極で反応効率を飛躍的に向上させました。 16 17

解説

レドックスフロー電池は出力や容量を容易に拡大できるため再生可能エネルギーのグリッド貯蔵に適していますが、その低効率が長らく実用上のネックとなってきました。 18 今回記録的な高効率・長寿命を示した新技術は、大量の再生エネルギーを無駄なく蓄える次世代蓄電池の実現に道を開き、電力網での大規模蓄電コストを削減し、太陽光・風力発電の更なる普及や安定化に貢献する可能性があるとして、エネルギー分野で大きな関心を集めています。 18

総額1億ドル超の長寿研究Xプライズが始動、老化“若返り”技術を世界公募

概要

非営利団体Xプライズ財団は5月12日、史上最大規模となる賞金総額1億1百万ドル(約140億円)の長寿研究コンテスト「XPRIZE Healthspan」を発表し、最終候補に残ったチームを公表しました。 19 この7年計画の国際賞レースでは、50~80歳の高齢者の筋肉・認知機能・免疫の3系統を劇的に若返らせる技術を競います。 20 優勝チームには2030年に賞金が授与される予定で、それまでに選抜された技術を用いて高齢者を対象とした1年間の臨床試験 (資金8,100万ドル) も実施される計画です。 21

解説

長寿・老化分野では近年、世界的に研究開発が加速しており、サウジアラビアの「Hevolution財団」が今後10年で10億ドルを投じる計画を表明するなど巨額資金が集まっています。 22 中でも今回のXプライズは桁違いの賞金規模で「加齢による限界を打ち破る」大胆な目標を掲げており、老化そのものを制御・逆転させうる技術への期待が高まっています。 23 健康寿命の飛躍的延伸につながるイノベーションが実現すれば、高齢者の生活の質向上や介護・医療費の削減といった社会的インパクトも極めて大きく、各国の関心を集めています。 24

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