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英国郵便局Horizonシステム冤罪事件(British Post Office scandal, Horizon IT scandal)

英国郵便局Horizonシステム冤罪事件(British Post Office scandal,Horizon IT scandal)とは、イギリスで1999年から2015年頃までにかけて起きた大規模な冤罪事件です。イギリス史上最大級の司法上の不祥事とも言われています。

事件の概要

この事件は、イギリスの郵便局(Post Office Ltd)が導入した『Horizon(ホライズン)』という会計システムに端を発しています。このシステムは富士通が開発したもので、1999年から全国の郵便局に導入され、郵便局員らの会計業務を管理していました。

導入後間もなく、各地の郵便局で会計上の異常な損失や誤差が頻発しました。郵便局側はこの原因を各地の支店長や職員による横領や詐欺行為だと断定し、多数の職員を告発・起訴しました。実際には、会計システムのバグや欠陥が損失を生み出していたにもかかわらず、職員らに冤罪がかけられたのです。

被害者と被害規模

  • 約700人以上の郵便局員(Subpostmasters)が、横領や詐欺の冤罪に問われました。
  • 約550人以上が有罪判決を受け、一部は収監されました。
  • 被告となった多くの人々は、社会的地位の喪失、自己破産、家族の離散、精神疾患、さらには自殺に追い込まれるケースまでありました。

事件の発覚と再審

被害者らの長年にわたる抗議と法廷闘争の末、2019年に高等裁判所が郵便局側の責任を認めました。システムにバグや欠陥が存在したこと、また郵便局がそれを把握しつつも隠蔽し続けていたことが明らかになりました。

  • 2021年4月23日、イングランドおよびウェールズの控訴院は39人の元郵便局員の有罪判決を取り消しました。
  • これ以降、他の被害者についても有罪判決が次々と取り消されています。

政府・郵便局側の対応

イギリス政府は事件の真相究明と被害者への補償を進めていますが、被害者らは政府と郵便局の対応が不十分であるとして強い批判を続けています。また、郵便局および富士通に対する民事裁判も進められています。

社会的影響

イギリスの司法史上、最大級の冤罪事件とされ、次のような影響を与えました。

  • イギリス司法制度や証拠取り扱いの仕組みに対する重大な疑念
  • ITシステムに起因する冤罪リスクへの警鐘
  • 民間企業と政府による隠蔽体質への批判

現在も、事件に関連した調査委員会(公聴会)が進行中であり、完全な真相解明と再発防止策が求められています。

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