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中国総合主要ニュース【2025年5月16日~31日】

2025年5月後半の中国主要ニュース(非経済)10選

1. 中国、南米5か国にビザ免除を試行

中国政府は、外国との人的な往来を促進するため、新たな措置を発表しました。ブラジル、アルゼンチン、チリ、ペルー、ウルグアイの南米5か国の一般旅券所持者に対し、ビザの免除を試行するものです。この措置は2025年6月1日から1年間実施されます。 1

これにより、5か国の国民は、30日以内の観光、商用、親族訪問などの目的であれば、中国入国時のビザが不要になります。この施策は、新型コロナウイルス感染症のパンデミック後、中国が観光客誘致や対外関係の強化を図る一環です。特に南米諸国との友好関係を深める狙いがあると見られています。海外からの訪問者が増えることによる地域経済の活性化や、相互交流の拡大が期待されます。

2. 習近平氏、第15次五カ年計画の策定で「高品質な計画」を指示

習近平国家主席(中国共産党総書記)は、「第15次五ヵ年計画(2026年~2030年)」の策定作業に関して重要な指示を出しました。計画の立案にあたり、科学的で民主的、法に基づく意思決定を堅持し、質の高い計画を策定するよう求めました。 2

習主席は、五カ年計画の策定と実施が、党の戦略方針を具体化し、「中国式現代化」を推進する上で極めて重要だと強調しました。科学的根拠に基づく政策立案と、国民が参加する手続きの重要性を訴えた形です。次期計画期間には、経済・社会目標の質的向上や技術の自立、環境対策など難しい課題が控えています。そのため、従来以上に綿密な政策調整と統合的なビジョンが求められています。今回の指示は、計画策定プロセスの透明性を高め、実効性を確保する狙いがあるとみられます。

3. 山東省の化学工場で爆発事故、多数の死傷者

5月27日、山東省高密市の化学工場で大規模な爆発事故が発生しました。この事故で、少なくとも5人が死亡、6人が行方不明、19人が負傷しました。 3

この工場は農薬を製造しており、爆発によって黒煙と有毒ガスが発生しました。 4 衝撃で周辺の住宅の窓ガラスが割れるなどの被害も出ています。当局は直ちに救助隊を派遣し、消火・救助活動にあたるとともに、事故原因の調査を進めています。 5 中国では近年、工場や鉱山での事故が相次いでおり、安全管理の不備などが指摘されています。今回の事故も、安全規制の徹底を促す契機となりそうです。

4. 中国、初の小惑星サンプル回収ミッション「天問2号」を打ち上げ

5月29日未明、中国は初の小惑星サンプルリターン(試料持ち帰り)ミッションとなる探査機「天問2号」の打ち上げに成功しました。 6 小惑星から試料を持ち帰ることを目指しており、成功すれば世界で3番目の国となります。

探査機は、地球近傍小惑星「カモオオアレワ(Kamoʻoalewa)」に向けて飛行します。2026年7月に到着して岩石試料を採取し、2027年11月に回収カプセルを地球に送り届ける計画です。 7 その後も、別の天体の探査を行う予定です。 8 このミッションは、日本の「はやぶさ」や米国の「オシリス・レックス(OSIRIS-REx)」の成果に続くもので、中国の宇宙開発戦略の一環です。 9 中国は、2030年までの有人月面着陸や火星からのサンプルリターン計画も進めており 10, 11、宇宙開発分野でのリーダーシップを目指しています。

5. 南シナ海で中比が衝突、中国海警が放水

5月21日、南シナ海のスプラトリー諸島(南沙諸島)付近で、フィリピンの調査船に対し、中国海警局の公船が放水を行い、船体に衝突する事件が発生しました。 12 フィリピン当局は、中国側の行為を「攻撃的な妨害」であると強く非難しました。一方、中国側は「フィリピン船が危険な接近をした」と主張し、自らの行動の正当性を訴えています。 13

現場海域では、中国が実効支配を強めるサンディー礁(フィリピン名:アユンギン礁)を巡り、両国の緊張が高まっています。 14 フィリピンは近年、米国との軍事協力を強化しています。5月下旬に開催された日米豪比4か国の国防相会談でも、中国による南シナ海での危険な行為への深刻な懸念が名指しで表明されました。 15

6. 婚姻届の「全国通办」開始、5月20日に婚姻件数が急増

5月10日から、中国で新しい婚姻登記条例が施行されました。これにより、中国本土の住民は居住地に関係なく、全国どこの役所でも結婚や離婚の手続きができるようになりました。 16 これまで必要だった戸籍簿(戸口簿)の提示も不要になり、手続きが大幅に簡素化されました。 17

この「婚姻登記全国通办(全国どこでも手続き可能という意味)」は、出稼ぎ労働者など、戸籍地と居住地が異なる人々にとって大きな利便性向上となります。施行後、最初の大安吉日とされた5月20日には、各地の婚姻登記所に多くのカップルが訪れました。「520」が中国語の「我愛你(愛してる)」の発音に似ているため、この日は「愛の日」として人気があります。近年、中国では若者の結婚離れや出生率の低下が社会問題となっており、政府は結婚を奨励する政策を進めています。

7. 日本大使館を「スパイ組織」と認定、中国人元論説委員の控訴審が波紋

日本の外交官に情報を提供したとして、スパイ罪で有罪判決を受けた中国の新聞社の元幹部、董氏の控訴審が5月31日に北京で開かれました。董氏側は一審に続き、無罪を主張しました。 18

弁護側は「日本の外交官はスパイではない」とする金杉憲治駐中国日本大使の署名入り書簡を証拠として提出し、中国当局の主張に反論しました。董氏は共産党系の新聞「光明日報」の元論説副主任という経歴を持つ改革派の知識人です。しかし、昨年11月の一審判決では「日本大使館はスパイ組織」と認定され、懲役7年の実刑判決を言い渡されていました。この判決は日本政府や国際社会から「正常な外交活動まで犯罪視している」との懸念を招いています。 19

8. 5月の中国各地で自然災害、人的損失は比較的軽微

2025年5月、中国各地で洪水、強風、雹(ひょう)、干ばつなど、多様な自然災害が発生しました。これにより、延べ446万人が被災し、死者・行方不明者は23人、避難者は延べ8,000人に上りました。 20

幸い、単一の大災害による甚大な被害はなく、建物の倒壊も約300棟にとどまるなど、人命被害は比較的に少ない月となりました。中国政府の緊急管理部によると、主な被害要因は南方の洪水や豪雨、局地的な雹害や干ばつでした。 21 早めの避難勧告や防災インフラ整備の効果で、死傷者の発生を最小限に抑えられたとみられています。 22 6月以降の洪水シーズンに向けて、当局は各地に備えを呼びかけています。 23

9. 民間企業ランドスペース社、メタン燃料ロケットの打ち上げに成功

北京のスタートアップ企業ランドスペース社は5月17日、新型のメタン液体燃料ロケット「朱雀2号改(Zhuque-2E)」の打ち上げに成功し、6基の小型衛星を軌道に投入しました。 24

同社は2023年7月に、世界で初めてメタンと液体酸素を推進剤とするロケットの打ち上げを成功させており、米国のスペースX社などに先駆けた技術開発で注目を集めています。 25 メタン燃料は、従来の燃料よりクリーンで安全、かつ低コストであるため、再利用型ロケットの推進剤として期待されています。 26 今回打ち上げられた衛星には、中国企業が開発したレーダー衛星などが含まれています。 27 この成功は、中国の商業宇宙産業の成熟を示すものであり、国内の通信・観測衛星ネットワーク構築(中国版スターリンク計画)にも弾みがつくと評価されています。 28, 29

10. 米国のハイテク規制強化に中国が反発

米国が5月に相次いで打ち出した対中ハイテク輸出規制の強化に対し、中国政府は「合意違反だ」と強く反発しました。5月15日、米商務省は先端半導体に用いるAIチップの輸出管理ガイドラインを公表し、対中規制を厳格化しました。 30

さらに5月30日には、半導体設計用のEDAソフトウェアの対中販売停止措置も報じられ、米中間のハイテク摩擦が一段とエスカレートしています。中国外交部は、これらの措置が米中間の合意事項に反するものだと非難し、即時撤回を要求しました。中国国内では、半導体産業の自立を加速させる動きや、米国への対抗措置を検討する声が高まっています。米中の「デカップリング(切り離し)」が一層進む中、今後の両国関係が注目されます。

参考文献:引用文献

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