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中国経済 主要ニュース【2025年5月16日~31日】

2025年5月16日~31日の中国国内主要ニュース

製造業PMIが2カ月連続で50を下回る(5月)

中国国家統計局が5月31日に発表した5月の製造業購買担当者景況指数(PMI)は49.5となりました。この数値は前月からわずかに改善したものの、景気の好不況の判断基準となる50を2カ月連続で下回りました。 1

PMIは、企業の購買担当者へのアンケート調査を基に算出される経済指標です。50を上回ると景気拡大、下回ると景気後退を示すとされています。米中貿易協議では追加関税の引き下げで一時的に合意し、経済への追い風も期待されました。しかし、企業の先行きに対する不安は根強く、受注や雇用の回復力は鈍い状況が続いています。この製造業の低迷は、国内需要の不足や対米輸出の減少を反映しており、中国経済は依然として回復の途上にあることを示しています。

人民銀行が7カ月ぶり利下げ、景気下支えへ

中国人民銀行(中央銀行)は5月20日、事実上の政策金利である最優遇貸出金利(LPR:Loan Prime Rate)の引き下げを発表しました。 2 1年物のLPRは3.10%から3.00%へ、住宅ローン金利の基準となる5年物のLPRは3.60%から3.50%へと、それぞれ0.10%ポイント引き下げられました。これは2019年のLPR制度改革以来の最低水準となります。

今回の利下げは2024年10月以来7カ月ぶりです。景気減速に直面する中で、消費や企業の資金調達を促進し、経済を支える狙いがあります。 3 同時に、大手国有銀行も預金金利を引き下げました。これは、銀行の収益性を確保しつつ金融緩和を進める姿勢を示しています。

「民営経済促進法」施行、民間企業支援を強化

2025年5月20日、中国で初めて民間経済の発展を目的とした基本法「民営経済促進法」が施行されました。 4 この法律では「国有経済の強化と民営経済の発展支援」の両立が明記されています。民営企業に対する平等な待遇や資金調達支援、知的財産保護の強化などが盛り込まれています。 5

この法律の背景には、これまで国の政策が国有企業に偏りがちで、「国進民退」(国有企業が発展し、民間企業が後退する傾向)が問題視されてきたことへの反省があります。人口減少や米中対立といった長期的な課題に直面する中、中国政府は民間企業の活力を高めることで、質の高い成長を維持する方針です。同法の施行は、政府が民営企業支援に本腰を入れていることを示すものと評価されています。

不動産市場の低迷続く、デフレ圧力も顕在化

中国の住宅不動産市場は5月も回復が遅れ、販売不振が続いています。大手不動産開発企業上位100社の5月の新築住宅販売額は、前年の同じ月と比べて8.6%減少しました。4月の8.7%減に続くマイナス成長で、不況の長期化が懸念されています。 6

不動産不況による建設投資の停滞や住宅価格の下落は、デフレーション(物価の継続的な下落)の圧力となっています。企業利益や家計の所得を圧迫し、国内需要に重くのしかかっています。 7 政府は昨年から、未完成住宅の引き渡しを保証する「保交楼」政策や、地方政府による在庫住宅の買い取り支援策などを講じてきました。しかし、その効果は限定的です。当局は追加の刺激策には慎重で、不動産セクターの底入れにはまだ時間が必要な見通しです。

山東省の化学工場で大爆発、死傷者発生

5月27日正午ごろ、中国東部の山東省淄博(しはく)市にある化学工場で大規模な爆発事故が発生しました。 8 農薬や医薬品の原料を製造していた工場から黒煙や橙色の煙が立ち上り、周辺の建物の窓ガラスが割れるほどの衝撃がありました。 9

中国の国営メディアによれば、この事故で少なくとも5人が死亡、6人が行方不明となり、負傷者も19人にのぼっています。 10 当局は消防隊員約230人を動員して消火・救助活動にあたり、原因の究明を進めています。中国では近年、工場事故がしばしば発生しており、安全管理の徹底と老朽化した設備の点検強化が社会的な課題となっています。

米中対立と経済への影響

米国が対中ハイテク輸出規制を強化

5月中、中国は米国による先端技術分野での対中輸出規制強化に直面しました。米商務省は5月15日、人工知能(AI)向け半導体などに関する輸出管理の新しい指針を公表しました。これにより、中国企業が米国の先端AIチップを入手することがさらに厳しくなりました。 11

また5月下旬には、半導体設計に不可欠なEDA(電子設計自動化)ツールの対中販売停止措置も伝えられました。これに対し、中国外交部は「ジュネーブ協議での合意に反し、中国の正当な権益を著しく損なう」と強く反発しました。対抗措置も辞さない姿勢を示しており、米中間のハイテク分野を巡る対立激化は、中国の技術産業や経済成長に大きな影響を及ぼしつつあります。

中国がレアアース輸出を規制

中国政府は4月4日付で、希土類(レアアース)の一部元素と関連製品の輸出規制を発動しました。その影響が5月末にかけて国際的に広がりました。 12 サマリウムやジスプロシウムなど、中国が世界の供給の大半を占めるレアアースについて、輸出には政府の許可が必要となりました。 13

この措置に対し、米国の自動車業界団体は強い懸念を表明しました。「ハイブリッド車やEVのモーター用磁石に不可欠なレアアース供給が断たれれば、生産に重大な支障が出る」として、トランプ政権に早急な対応を求めています。 14 中国は一部のレアアースで世界の95%以上を供給しており、この輸出管理強化は世界のハイテク産業に大きな不安を与えています。 15

米中貿易交渉の行方

5月30日、トランプ米大統領は、米中貿易協議における関税引き下げ合意に中国が「完全に違反した」と主張しました。そして、厳しい措置を取る可能性を示唆しました。 16, 17 米中両国は5月中旬、互いの追加関税率を一時的に引き下げることで合意していました。 18 しかしトランプ大統領は、中国が合意事項を履行していないと非難したのです。中国側は合意違反を否定していますが、この発言により米中関係の再緊張や追加制裁の懸念が高まっています。

中国の外交・貿易政策

李強首相、貿易自由化を訴え

5月27日、マレーシアで開催されたASEAN・GCC(湾岸協力会議)首脳会議の場で、中国の李強首相が演説しました。各国に対し、貿易障壁の撤廃と市場開放の拡大を呼びかけました。 19 李首相は「一部で保護主義が台頭する中、世界はWTO(世界貿易機関)を中心とした多国間貿易体制を守るべきだ」と強調し、米国の一国主義的な動きを牽制しました。 20

また、自国経済について「年初から回復と改善が続いており、対外圧力下でも輸出は底堅い」と述べました。過去最大規模の財政支出や消費振興策によって、内需の喚起に努めていると説明しました。 21 これは米中摩擦が続く中でも、中国が自国経済の安定成長と国際的な経済連携に自信を見せた形です。

ブラジル産鶏肉の全面輸入停止

中国税関当局は5月29日、ブラジル産の家禽類(鶏肉など)および関連製品の輸入を全国的に全面停止すると発表しました。 22 これは、ブラジル南部で高病原性鳥インフルエンザの感染が家禽で初めて確認されたことを受けた措置です。 23

ブラジルは世界最大の鶏肉輸出国であり、中国はその最大の輸入先です。中国による全面禁輸措置は、ブラジルの家禽業界に大きな打撃を与えます。同時に、中国国内でも代替供給の確保や食肉価格への影響が懸念されています。日本やEUなど他の主要輸入国は、発生地域を限定した措置に留めており、中国の厳格な対応が国際的にも注目されています。 24

参考文献:引用文献

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