中東

イランの「最高指導者」と「大統領」との違い:権力の範囲や役割分担について

イランの政治体制における最高指導者と大統領の権力の範囲や役割、および違いについて

イランの政治体制は他国と比較しても非常に特徴的で、特に「最高指導者(ラフバル)」と「大統領(ライース・ジョムフール)」という二つの役職が存在し、それぞれが異なる権力と役割を担っています。この記事では、一般の方にもわかりやすく、その違いや役割を解説します。

最高指導者(ラフバル)とは?

イランの政治体制における最高指導者は、国家の最高権威であり、宗教的・政治的な最終決定権を持つ存在です。現在の最高指導者はアリー・ハーメネイー師で、終身制のため、一度就任すると特別な事情がない限り、生涯にわたってその地位を保持します。

主な権限と役割:

  • 軍隊(正規軍および革命防衛隊)の最高司令官
  • 司法長官や国営メディアのトップの任命権
  • 外交や核政策の基本的な戦略方針を決定
  • 宗教的価値観の守護者としての役割

大統領(ライース・ジョムフール)とは?

一方、大統領は国家行政のトップとして、日常的な政治・経済・外交の実務を担当します。現在の大統領は2024年に選出されたマスード・ペゼシュキアン氏です。任期は4年で、再選は1度まで可能です。

主な権限と役割:

  • 政府の実務的な政策運営(経済政策、内政管理)
  • 閣僚の任命(ただし重要閣僚は最高指導者の承認が必要)
  • 国家予算の作成・議会提出
  • 諸外国との外交交渉

最高指導者と大統領の主な違い

この二つの役職の違いは、特に権限の範囲や選出方法、任期に表れています。

  • 権限の範囲:最高指導者は宗教的権威や軍事、司法、放送分野に広範な影響力を持ち、大統領は行政面の実務を中心に担当します。
  • 選出方法:最高指導者は専門家会議(イスラム法学者が集まった機関)によって選ばれますが、大統領は国民の直接選挙で選ばれます(ただし候補者は護憲評議会の承認が必要)。
  • 任期:最高指導者は終身制であるのに対し、大統領は最長でも連続2期(計8年)までです。

なぜこのような二元的な体制なのか?

イランでは1979年のイスラム革命以降、「政教一致」の原則に基づいて国家が運営されています。最高指導者が宗教的かつ政治的な究極の決定権を持つ一方で、大統領は具体的な行政を担うことで、政治的安定や国家運営の実務性を確保しているのです。

イランの最高指導者と大統領は、それぞれ明確に役割が分けられており、国家運営を二元的に担っています。この体制を理解することは、イランという国の政策や動向を読み解く上で重要なポイントとなります。

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