太陽フレアでオーロラが日本でも?磁気嵐の影響と注意点
2025年5月末に発生した強力な太陽フレアの影響で、6月初旬にかけて地球は深刻な「磁気嵐(じきあらし)」に見舞われました。アメリカでは「太陽フレア警報」が発令され、普段は見られない地域でもオーロラが観測されるなど大きな注目を集めました。この記事では、太陽フレアとは何か、私たちの生活にどんな影響があるのか、そしてどのように備えれば良いのかを、最新情報に基づいて解説します。
何が起きたの?太陽フレアと磁気嵐の到来
2025年5月30日(米東部時間)、太陽の特定の活動領域で大規模な太陽フレア(太陽表面での爆発現象)が発生しました。これは、最も強力なXクラスに迫るM8.1という規模のフレアでした。 1 このフレアに伴い、「コロナ質量放出(CME)」という現象も発生。CMEとは、太陽の表面からガスと磁場が大量に宇宙空間へ放出されるもので、今回のCMEは非常に高速で地球に向かってきました。そして約2日後の6月1日昼頃、地球の磁場に到達したとみられています。
実際に、米東部夏時間6月1日午前9時46分には、地磁気活動の強さを示す「K指数」が「8」(最大は9)に達し、これは地球に非常に強い磁気嵐が到来したことを示しています。
専門機関はどう対応した?NOAAやNASAの発表
アメリカの宇宙天気予報を管轄するNOAA(アメリカ海洋大気庁)宇宙天気予報センター(SWPC)は、CMEの到来に先立ち、5月31日に「G4(深刻な)ジオマグネティックストーム(磁気嵐)」への警戒を呼びかける警報を発令しました。これはNOAAの5段階評価で上から2番目に強いレベルです。 2 その後、実際に磁気嵐が到来すると、警報の有効期間は延長され、G3(強い)レベルの宇宙天気の荒れが6月3日朝まで続く見通しであると発表されました。 3
NASA(アメリカ航空宇宙局)も、太陽活動が約11年周期で最も活発になる「太陽極大期」に近づいている影響で、今後も同程度の磁気嵐が増える可能性があると注意を促しています。 4
どんな影響があるの?私たちの生活との関わり
強い磁気嵐が発生すると、私たちの生活を支える様々なインフラに影響が出る可能性があります。
- 電力網:送電線に予期せぬ電流(誘導電流)が流れ、変圧器の故障や大規模な停電を引き起こす可能性があります。NOAAの警報でも「広範な電圧制御の問題」が指摘されました。
- 人工衛星:衛星の表面が帯電したり、軌道が乱れたりして、機能に支障が出ることがあります。
- 通信:太陽フレアに伴うX線などの影響で、短波無線通信が数時間使えなくなることがあります。また、GPSなどの衛星測位システムの精度が低下することもあります。
- 航空機:高緯度を飛ぶ航空機は、通信障害や乗員・乗客の放射線被ばく量増加のリスクがあるため、ルートを変更することがあります。2024年の同規模の嵐では、実際に航空機が迂回飛行を行いました。
しかし、今回の磁気嵐では、事前に各インフラ事業者に警戒情報が共有され対策が取られたためか、現時点では大きな障害は報告されていません。 5
SNSでの大反響と注意すべき情報
NOAAが「アメリカ中緯度地域でもオーロラが見えるかもしれない」と発表したことから、SNSでは「オーロラが見えるチャンス!」と大きな話題になりました。テキサス州など普段オーロラが見られない地域でも観測報告があり、多くの写真が投稿されました。Twitter(X)では「#SolarFlare」や「オーロラ」といった言葉がトレンド入りし、専門家によるリアルタイム解説も注目を集めました。 6
一方で、SNS上では「今回の太陽フレアで地球規模のインターネット障害が数週間続く」といった根拠のない情報も拡散されました。しかし、NASAやNOAAはそのような警告を一切出しておらず、専門家も「インターネットが長期間使えなくなる可能性は極めて低い」と否定しています。 7 NOAAは、今回の嵐について「昨年5月に観測された歴史的なG5級の嵐ほどではなく、インフラへの影響は限定的だ」と分析しており、過度な不安を煽る情報には注意が必要です。
今後の見通しと私たちにできること
NOAAによると、今回のCMEの影響は6月3日以降は次第に弱まり、磁気嵐も落ち着いていくと予測されています。 8 ただし、太陽の活動は依然として活発で、今後数日は中規模のフレアによる短波通信障害などが起こる可能性が通常より高い状態が続く見込みです。
一般の人々にとって、強い磁気嵐が予測・発生している間は、念のため不要な電子機器の電源を切ったり、コンセントから抜いたりすることで、機器の故障リスクを減らすことができるかもしれません。太陽活動は2024年から2025年にかけて極大期を迎えるため、今後も同程度の嵐が起こり得ます。引き続き、公式機関からの宇宙天気情報に注意し、適切に備えることが大切です。いたずらに恐れる必要はなく、むしろ条件が整えば美しいオーロラを観察できる貴重な機会と捉え、安全に天体ショーを楽しむのも良いでしょう。
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