インド・パキスタン攻撃と両国の動向 (2025年 5月7日時点)

I. 2025年5月7日のインド軍のパキスタン領内への攻撃
II. 背景：パハルガム襲撃事件と高まる緊張
III. インドによる攻撃：「シンドゥール作戦」
IV. パキスタンの対応と反論
V. 主要な出来事の時系列：2025年5月5日～7日
VI. 国際社会の反応と外交努力
VII. メディア報道：比較概要
VIII. 専門家による分析と今後の見通し
IX. 結論
引用文献

I. 2025年5月7日のインド軍のパキスタン領内への攻撃

2025年5月7日、インド軍はパキスタン領内およびパキスタン実効支配下のカシミール（PoK）において、「シンドゥール作戦」（Operation Sindoor）と名付けられた軍事行動を実施したとの報道があった。本報告書は、この攻撃に至る背景、作戦の詳細、パキスタン側の反応、関連する外交努力、そして国際社会の受け止めについて、インド・パキスタン国内メディアおよび主要英語メディアの情報を中心に分析するものである。両国は核保有国であり、この地域の緊張激化は国際的な安全保障に深刻な影響を及ぼす可能性があるため、事態の推移を注意深く見守る必要がある。

II. 背景：パハルガム襲撃事件と高まる緊張

今回のインドによる攻撃の直接的な引き金となったのは、2025年4月22日にインド実効支配下のカシミール地方パハルガムで発生した観光客襲撃事件である [cite: 1]。この襲撃では、主にインド人ヒンズー教徒の観光客26人（情報源により25人から28人と幅がある）が殺害され、多数の負傷者が出た [cite: 1]。インド政府は即座にパキスタンが背後で支援しているテロ攻撃であると非難したが、パキスタン政府はこれを否定した [cite: 3]。

事件後、両国関係は急速に悪化した。インドは報復措置として、外交官や国民の相互追放、国境閉鎖、領空閉鎖、さらにはインダス水条約という重要な水利共有条約の停止といった強硬策を打ち出した [cite: 1]。パキスタンも同様の対抗措置を取り、両国間の緊張は2019年のカシミールでの自爆テロ事件以来、最も高いレベルに達した [cite: 3]。パキスタンは5月3日に弾道ミサイルの発射実験を行い、インドも軍事演習を実施するなど、軍事的な示威行動も活発化した [cite: 1]。

国際社会からは、アメリカ、中国、ロシア、サウジアラビアなどが自制を促し、イランは仲介を申し出るなど、エスカレーションを懸念する声が相次いでいた [cite: 1]。国連のアントニオ・グテーレス事務総長も、両国に対し悲劇的な結果をもたらしかねない対立を避けるよう強く求めていた [cite: 3]。

このような状況下で、パキスタン政府は5月6日、インドが数日以内に攻撃を計画しているとの「信頼できる情報」があると発表し、強く対抗すると警告していた [cite: 3]。一方、インドのナレンドラ・モディ首相は、パハルガム襲撃事件への対応について、軍に作戦の形態、標的、時期の決定に関する完全な作戦上の自由を与えたと報じられていた [cite: 3]。

III. インドによる攻撃：「シンドゥール作戦」

インド軍は2025年5月7日未明、「シンドゥール作戦」を発動し、パキスタン領内およびパキスタン実効支配下のカシミール（PoK）にあるテロリストのインフラとされる拠点を攻撃した [cite: 4]。

A. 作戦の概要と目的

作戦名と象徴性：

「シンドゥール作戦」という名称は、ヒンディー語で既婚のヒンドゥー教徒女性が額につける赤い粉を意味する「シンドゥール」に由来する [cite: 10]。これは、パハルガム襲撃事件で夫を目の前で殺害された女性たちへの追悼と、男性のみが信仰に基づいて殺害されたことへの報復を象徴していると報じられている [cite: 10]。この名称と、インド政府による「野蛮なパハルガムのテロ攻撃」の責任者を追及するという声明は、インドがこの作戦を国内向けのアピールと抑止のメッセージを込めた報復的任務と位置付けていることを強く示唆している。インド軍はX（旧Twitter）に「正義は果たされた」（Justice is Served）と投稿し、このテーマを強調した [cite: 4]。このような物語は、インド政府にとって具体的な「勝利」を示すことなくエスカレーションを収束させることを政治的に困難にし、緊張を長引かせる可能性がある。また、紛争の物語を共同体化するリスクも伴う。

標的：

インド国防省の発表によると、攻撃対象はパキスタンおよびPoKにある9ヶ所のテロリストのインフラであり、「インドに対するテロ攻撃が計画・指示された場所」とされた [cite: 8]。標的には、ジャイシュ・エ・ムハンマド（JeM）のバハワルプルにある本部や、ラシュカレトイバ（LeT）のムリドケにある本部が含まれていたとされる [cite: 8]。インド側は、パキスタンの軍事施設は標的にしておらず、民間人、経済、軍事目標への被害はなかったと主張している [cite: 9]。

実行方法：

インド軍は、ラファール戦闘機に搭載されたスカッド巡航ミサイルやハンマー精密誘導弾、さらに徘徊型兵器（loitering munitions）など、陸海空軍の精密攻撃兵器システムを使用したと報じられている [cite: 8]。攻撃はインド領空内から行われたとインド側は主張している [cite: 5]。

B. インド政府の公式声明と正当化

インド国防省/報道情報局（PIB）の声明：

「インド軍は『シンドゥール作戦』を開始し、パキスタンおよびパキスタン実効支配下のジャンムー・カシミール（PoJK）にある、インドに対するテロ攻撃が計画・指示されたテロリストのインフラを攻撃した。合計9ヶ所が標的とされた。我々の行動は的を絞り、抑制的かつ非エスカレート的な性質のものである。パキスタンの軍事施設は標的にされていない。インドは標的の選定と実行方法において相当な自制を示した。これらの措置は、インド人25人とネパール人1人が殺害された野蛮なパハルガムのテロ攻撃を受けてのものである。我々はこの攻撃の責任者を追及するという約束を果たしている。『シンドゥール作戦』に関する詳細なブリーフィングは本日後半に行われる」[cite: 9]。インドが「非エスカレート的」意図を繰り返し強調し、軍事施設を避け「テロリストのインフラ」のみを標的としたことは、国際的な認識を管理し、パキスタンが大規模な通常戦争を避けるための「出口」を提供しようとする明確な試みである。これは、攻撃を対テロ作戦の枠内に位置づけることで達成しようとしている。このメッセージングは、アメリカなどの主要な国際的パートナーにも直接伝えられた [cite: 16]。標的を狭く定義することで、インドはエスカレーションの梯子を制御し、これがパキスタン国家や軍自体への攻撃ではないことを示唆し、それによってパキスタンの対応範囲を限定しようとしている。これがエスカレーション回避の狭い道筋を提供する可能性があるが、パキスタンの解釈とその国内事情に大きく依存する。

インド軍のSNS投稿：

インド軍はX（旧Twitter）に「#PahalgamTerrorAttack 正義は果たされた。ジャイ・ハインド！」と投稿した [cite: 4]。また、「प्रहाराय सन्निहिताः, जयाय प्रशिक्षिताः」（攻撃準備完了、勝利のための訓練済み）とも投稿した [cite: 21]。

駐米インド大使館の声明（米当局へのブリーフィング後）：

行動は「抑制的、責任ある、非エスカレート的なものとして計画された」。パキスタンの民間人、経済、軍事目標への打撃はなく、既知のテロキャンプのみが標的とされた [cite: 13]。インドはパハルガム事件へのパキスタン拠点テロリストの関与を示す「信頼できる手がかり」を持っている [cite: 23]。

モディ首相の関与：

作戦を一晩中監視していたと報じられている [cite: 10]。

閣僚の反応：

ピユーシュ・ゴヤル連邦大臣やラージナート・シン国防大臣が「バーラト・マータ・キ・ジャイ」（母なるインド万歳）と投稿した [cite: 8]。

IV. パキスタンの対応と反論

インドによる「シンドゥール作戦」に対し、パキスタンは即座に強く反発し、独自の主張と対抗措置を展開した。

A. 即時反応と非難

シェバズ・シャリフ首相：

インドの攻撃を「戦争行為」であり「5ヶ所への卑劣な攻撃」と非難。「パキスタンには（中略）断固たる対応をするあらゆる権利があり、実際に強力な対応がなされている」と述べた [cite: 5]。

軍報道局（ISPR）アフメド・シャリフ・チョードリー報道官：

攻撃を「卑劣な攻撃」と非難し、パキスタンは「自らが選ぶ時と場所で」対応するとし、「この凶悪な挑発が無回答のまま終わることはない」と述べた。インドの攻撃はインド領空内から行われたと主張した [cite: 3]。

パキスタン外務省：

攻撃を「いわれのない明白な戦争行為」であり「国連憲章の露骨な違反」と呼び、商業航空交通への「重大な脅威」であり、核保有国を「大規模紛争に近づけた」と警告した [cite: 5]。

カージャ・アシフ国防相：

インドが「テロリストのキャンプ」を標的にしたとの主張は虚偽であり、民間施設が攻撃されたと述べた [cite: 13]。インドとの衝突は「不可避」であるとも発言した [cite: 21]。

B. 死傷者、損害、矛盾する報告

両国の主張には大きな隔たりがあり、客観的な検証が困難な状況となっている。以下の表は、2025年5月7日の攻撃に関する両国の主な主張をまとめたものである。

主張の側面	インド側の主張と情報源	パキスタン側の主張と情報源
インド側航空機の損失	いかなる航空機の損失も否定 [cite: 8]	インドの戦闘機2～5機（ラファール、MiG-29、Su-30MKIを含む）とドローン1機を撃墜。インド軍旅団司令部を破壊。不特定多数のインド兵を捕虜にしたと主張 [cite: 4]。
パキスタン側の死傷者	パキスタン側の死傷者については言及なし。作戦はテロリストのインフラのみを標的としたと主張 [cite: 9]。	民間人8～9人が死亡（子供、3歳の少女、16歳の少女、18歳の少年を含む）、22～38人が負傷。2人が行方不明 [cite: 4]。
パキスタンで攻撃された標的の性質	テロリストのインフラのみ。パキスタンの軍事施設、民間施設、経済目標は標的にせず [cite: 9]。	モスク（バハワルプルのアフマドプル・イーストにあるスブハヌッラー・モスク、ムザファラバードのビラル・モスク、コトリのアバット・モスク、ムリドケのムガルプラ・モスク）、民間人の家屋が攻撃されたと主張。ムザファラバードでは停電が発生 [cite: 4]。
インド側の死傷者	5月6日夜から7日にかけて、LoC（管理ライン）越しのパキスタンからの無差別砲撃・砲撃により、ジャンムー・カシミールでインドの民間人3人が死亡。プーンチでのパキスタン軍の砲撃により女性と女児が負傷 [cite: 8]。	言及なし。

パキスタンによるインドの高性能戦闘機（ラファール、Su-30など）の複数撃墜や兵士捕虜の主張は、インド側が強く否定しており、検証されていない場合、主に国内向けに軍事力と対等性を誇示し、インドのさらなる行動を抑止する試みと見られる。これは非常にリスクの高い情報戦略である [cite: 5]。このような主張は、特に信頼できる証拠によって裏付けられない場合、パキスタンの国家の士気を高め、地上での現実に関わらず強力な報復能力を示すのに役立つ。これは、過去の緊張激化時に両国が矛盾する主張を行った例を踏襲している。「情報戦」の要素は極めて重要である。パキスタンがこれらの主張を立証できなければ、国際的な信頼性が損なわれる可能性があるが、国内では強力な対応の物語が維持されるかもしれない。これにより客観的な評価が困難になり、さらなる不信感を煽ることになる [cite: 5]。

インドの攻撃が民間人やモスクを標的にしたというパキスタンの主張と、インドの「テロリストのインフラ」のみを標的にしたという主張の対立は、国際的な同情を得てインドを非難し、将来的にインドの作戦の自由を制限する可能性のある意図的な戦略である [cite: 5]。パキスタンの当局者（首相、ISPR、外務省、国防相）は、一貫して民間人の死傷者とモスクへの損害を強調した [cite: 4, 5, 13]。これは、非民間人、非軍事目標への精密攻撃というインドの物語と真っ向から対立する [cite: 9, 16]。人道的懸念や宗教施設の保護への訴えは、国際社会に強く響く [cite: 5]。パキスタンの主張が国際的に支持を得れば、インドに対する外交的圧力が強まり、エスカレーションを回避するか、標的選定についてより透明性を高めるよう迫られる可能性があり、将来のインドの軍事的選択肢を制約する可能性がある。これもまたプロパガンダ戦争を煽るものである [cite: 5]。

C. パキスタンの報復措置と国家安全保障委員会（NSC）の審議

軍事的対応：

パキスタンは、プーンチ・ラジョウリ地区のビンベル・ガリなどのセクターでLoC沿いに激しい砲撃を開始した。インド軍は「適切に対応している」と述べた [cite: 5]。パキスタン空軍の戦闘機が空中待機し、対応していると主張した [cite: 26]。

領空閉鎖：

パキスタンは48時間領空を閉鎖し、国際線および国内線に影響が出た。ラホールとシアールコートの空港が閉鎖された [cite: 3]。

学校閉鎖：

パキスタン実効支配下のカシミールおよびパンジャブ州で学校が閉鎖された [cite: 5]。

非常事態宣言：

パキスタン実効支配下のカシミールの病院で非常事態が宣言された [cite: 5]。パキスタンのパンジャブ州でも非常事態が宣言された [cite: 22]。

国家安全保障委員会（NSC）会議：

シェバズ・シャリフ首相により5月7日午前に招集された [cite: 5]。

結果：

NSC会議は安全保障状況を評価し、対応を決定することを目的とした。情報相アタウッラー・タラル氏は、防衛戦略に関する重要な決定が下されると述べた。シェバズ首相は国民に向けて演説を行う予定だった。会議では軍の準備態勢が検討されることになっていた [cite: 49]。

V. 主要な出来事の時系列：2025年5月5日～7日

以下は、2025年5月5日から7日にかけての、軍事、外交、メディア報道における主要な出来事の時系列である。

日付	時刻（おおよそ、ISTまたはPKT）	出来事
5月5日（月）		ムーディーズ、緊張激化によるパキスタン経済への影響を警告
		インド内務省、5月7日に全国的な民間防衛模擬訓練を発表
	午後	国連安保理、パキスタンの要請でインド・パキスタン情勢に関する緊急非公開協議開催。自制を求めるも公式声明なし
		グテーレス国連事務総長、深い懸念を表明し「最大限の自制」を要請
		中国、パキスタンへの「揺るぎない支持」を再表明。駐パキスタン中国大使がパキスタン大統領と会談。戦略家ビクター・ガオ氏、中国はパキスタンの主権を防衛すると警告
5月6日（火）		パキスタン、「インドが24～36時間以内に攻撃を計画しているとの信頼できる情報がある」と発表。強力な対応を表明
		インドのモディ首相、軍に作戦上の完全な自由を与えたと報道
		パキスタンのシェバズ・シャリフ首相、ISI本部を訪問し、インドからの「通常脅威」について説明を受ける
		インド空軍が国境沿いで演習との報道
		パキスタン、バロチスタンでのIED爆発で兵士7人が死亡したとしてインドを非難（とされる）
	深夜（現地時間）/5月7日早朝	パキスタン/PoKで爆発音との報道
5月7日（水）	01:44 AM IST (約23:14 GMT 5月6日)	インド国防省/PIB、「シンドゥール作戦」により9ヶ所を標的にしたと発表
		インド軍、Xに「正義は果たされた」と投稿
		パキスタンのシェバズ・シャリフ首相、攻撃を「戦争行為」と非難。午前10時30分PKTにNSC会議を招集、対応は進行中と発言
		ISPR報道官アフメド・シャリフ・チョードリー中将が記者会見：インドが6ヶ所を攻撃、8人死亡、22～38人負傷と主張。パキスタンは対応すると表明。インド軍機撃墜を主張
		インドのドバルNSA（国家安全保障担当補佐官）、米国のルビオ国務長官にブリーフィング
		インド、ロシア、英国、サウジアラビア、UAEにもブリーフィング
		パキスタン、LoC沿いで激しい砲撃を開始。インドも応戦
		インドの民間人3人が死亡と報道
		北インドとパキスタンの空港閉鎖、フライト欠航・迂回
	10:00 AM IST	インド軍記者会見予定

一連の出来事、特にインドが5月7日に実施を事前に発表していた民間防衛訓練 [cite: 6, 17] や、パキスタンが差し迫った攻撃に関する情報を公表したこと [cite: 3] は、双方がある程度の緊張の高まりと準備期間を経たことを示唆しており、攻撃は完全な奇襲ではなかったものの、具体的な内容は不明であった。インドは5月7日に全国的な民間防衛訓練を予定していたが、これはリスクの高まりを予期していなければ異例の措置である [cite: 6, 17]。パキスタンは5月6日、24～36時間以内にインドの攻撃が予想されると発表した [cite: 3]。双方は数日前から軍事的示威行動や演習を行っていた [cite: 1, 4]。これは、「シンドゥール作戦」の正確な性質やタイミングは秘密であったかもしれないが、インドによる重大な対応はパキスタンによって予期されており、インドは国民に潜在的な影響への準備を促していたことを示している。この「予告」が意図的なものであったか、諜報活動の結果であったかは別として、パキスタンの対応準備に影響を与え、初期の国際的な反応を形成した可能性がある [cite: 7]。攻撃直後の両国による領空および空港の迅速な閉鎖 [cite: 8, 13, 20] は、2019年のような過去の紛争からの教訓を反映し、航空活動への迅速なエスカレーションの可能性を相互に理解していることを示している [cite: 7]。領空閉鎖は、複数の情報源によって報告された最初の非軍事的対応の一つであった [cite: 8, 13, 20]。これは民間航空に大きな影響を与え、通常、空対空戦闘や地対空攻撃のリスクがある場合に取られる措置である [cite: 7]。2019年の小競り合いでは、空中戦と航空機の撃墜が発生した。迅速な実施は、このような事態に対する既存のプロトコルを示唆している [cite: 7]。双方は航空領域のエスカレーションに非常に敏感であり、経済的影響も伴う混乱を招く予防措置を講じる準備ができている [cite: 7]。

VI. 国際社会の反応と外交努力

インドによる「シンドゥール作戦」とそれに続く両国間の緊張激化に対し、国際社会は強い懸念を示し、自制と対話を求める声が相次いだ。

A. 国際連合

アントニオ・グテーレス事務総長：

インドの軍事作戦に深い懸念を表明し、「最大限の軍事的自制」を要請。「世界はインドとパキスタンの軍事衝突に耐えられない」と警告した [cite: 3]。また、仲介の用意があることを申し出た。

国連安全保障理事会：

5月5日、パキスタンの要請により緊急の非公開協議を開催。公式声明は出されなかったが、理事国は自制と対話を求めたと報じられている。

B. アメリカ合衆国

ドナルド・トランプ大統領：

攻撃を「残念なことだ」と述べ、事態の早期収拾を望むと表明した [cite: 14]。

マルコ・ルビオ国務長官：

状況を注視しており、大統領と同様に早期収拾を望むとし、平和的解決に向けてインドとパキスタンの指導者と関与を続けると述べた。インドのドバルNSAから説明を受けた [cite: 3]。

国務省報道官：

当初、報道は認識しているが評価はできないと述べていた [cite: 8]。

アメリカは、インドとパキスタンの双方とハイレベル（NSA、国務長官）で直接関与し、過去の危機と同様に、主要なエスカレーション回避のファシリテーターとしての地位を確立しようとしているように見える。トランプ大統領とルビオ国務長官は迅速に声明を発表した [cite: 13]。インドのドバルNSAは攻撃直後にルビオ国務長官に状況を説明した [cite: 16]。インドによるこの米国との直接的なハイレベルコミュニケーションチャネルは、南アジアの危機管理における米国の重要な役割を理解していることを示唆している。歴史的に、米国はインド・パキスタン間の緊張緩和に重要な役割を果たしてきた。米国の外交行動とその両国との効果的なコミュニケーション能力は、さらなるエスカレーションを防ぐ上で極めて重要となるだろう。米国の関与の性質（例：公平か、どちらかに傾いているか）が危機の行方を左右する可能性がある [cite: 8]。

C. 中国

攻撃前（5月5日）：

駐イスラマバード大使やビクター・ガオ氏のような戦略家は、パキスタンへの「揺るぎない支持」とパキスタンの主権を防衛する用意があることを改めて表明し、パハルガム攻撃に関する公平な調査を求めるとともに、自制を促した。

攻撃後（5月7日）：

林剣外務省報道官は、双方に慎重な行動と事態の沈静化を促した。パハルガム攻撃を非難したが、インドの攻撃に対する直接的な批判は避けた。

中国の反応は、自制を求める一方で、パキスタンの主権に対する「全天候型」の支持を強く強調しており、パキスタンを勇気づける可能性があると同時に、インドに対しては北京を巻き込む広範なエスカレーションのリスクを示唆している [cite: 8]。

D. ロシア

攻撃前（5月3～4日）：

セルゲイ・ラブロフ外相は、インドとパキスタンに対し、シムラ協定とラホール宣言に言及し、外交を通じて問題を解決するよう促した。

攻撃後：

インドはロシアを含む他の国々にも状況を説明した。5月7日の攻撃後のロシアの公式声明は情報源では広範にカバーされていないが、5月5日の国連安保理会合後、ロシアの外交官はエスカレーション回避への期待を表明した。

ロシアのより伝統的な外交的呼びかけは、過去の合意の遵守を求めるものであり、インドとの長年の関係と地域の安定への願望を反映している。ロシアは、エスカレーション回避のためのより中立的な仲介者として機能する可能性がある [cite: 8]。

E. アラブ首長国連邦（UAE）

アブドッラー・ビン・ザーイド外相は、自制、緊張緩和、対話を呼びかけた [cite: 13]。

F. イギリス

ジョン・スウィニー氏、ステラ・クレイジー氏、アフマド卿、ザラ・スルタナ氏などの政治家が深い懸念を表明し、自制と対話を促し、戦争の可能性を警告した。

外務省は渡航情報を発表した。

攻撃前（4月28日）：デイビッド・ラミー外相はインドとパキスタンの外相と会談し、緊張緩和を強調した。インドは攻撃後、英国にも状況を説明した。

G. 欧州連合（EU）

攻撃前（5月2～3日）：

カヤ・カッラス上級代表（外務・安全保障政策）は懸念を表明し、インドとパキスタンの外相に自制と対話を促した。

攻撃後の声明は情報源では詳細に報じられていない。

H. イラン

攻撃前に仲介を申し出ていた [cite: 1]。

VII. メディア報道：比較概要

今回のインドによるパキスタン攻撃とそれに続く緊張激化は、インド、パキスタン両国内および国際メディアによって広範に報道されたが、その論調や焦点には顕著な違いが見られた。

A. インドメディアの報道傾向

インドメディア（India Today, Times of India, The Hindu, The New Indian Express, NDTVなど）は、「シンドゥール作戦」をパハルガム襲撃事件への報復であり、成功した作戦として大きく報じた [cite: 8]。インド政府の公式発表（「的を絞った、抑制的、非エスカレート的」な攻撃であり、パキスタンの軍事施設は標的にしていない）を強調した [cite: 9]。パキスタン側の主張（インド軍機の撃墜、民間人の死傷）については、インド政府筋の否定を併記する形で報道した [cite: 8]。作戦の名称「シンドゥール」の象徴性や、モディ首相が作戦を徹夜で監視したことなども伝えられた [cite: 10]。国内の専門家や元軍高官による、作戦の正当性やインドの断固たる姿勢を支持するコメントが目立った。一部メディアは、作戦が陸海空軍の統合運用であったことや、使用された兵器（ラファール戦闘機、スカッド巡航ミサイル、徘徊型兵器など）についても報じた [cite: 8]。

B. パキスタンメディアの報道傾向

パキスタンメディア（Dawn, The News International, Express Tribune, Geo Newsなど）は、インドによる攻撃を「いわれのない侵略」「戦争行為」として強く非難した [cite: 5]。ISPR報道官や政府高官の声明を大きく取り上げ、民間人の死傷（子供や女性を含む8～9人死亡、22～38人負傷）やモスクへの被害を強調した [cite: 4]。パキスタン軍による報復（インド軍機2～5機の撃墜、インド軍旅団司令部の破壊など）を大々的に報道した [cite: 4]。シャリフ首相が国家安全保障委員会（NSC）を招集したことや、パキスタンが「自らが選ぶ時と場所で」報復する権利を留保していることを強調した [cite: 5]。社説や論説では、インドの行動を非難しつつ、パキスタンの断固たる対応を支持する論調が支配的であった。一部には、エスカレーションを避けるための自制を求める声も見られたが、インドに対する不信感が強く表明された。

C. 国際メディアの報道傾向

国際メディア（AP通信、ロイター、BBC、アルジャジーラ、Politico、CBS Newsなど）は、インドによる攻撃とパキスタンの反応を客観的に報道しようと努めたが、両国の主張が大きく食い違うため、検証が困難であることを指摘する報道も散見された [cite: 1]。国連事務総長やアメリカ大統領、国務長官など、国際社会からの自制を求める声を伝えた [cite: 3]。両国が核保有国であること、過去の紛争の経緯などを背景情報として提供し、エスカレーションのリスクを強調した [cite: 1]。専門家のコメントを引用し、事態の分析や今後の見通しについて多角的な視点を提供した [cite: 1]。アルジャジーラやAP通信などは、現地からの映像（攻撃跡とされる建物の被害状況、住民の様子など）も配信した [cite: 5]。

インド国内メディアは、政府の発表を基調としつつも、作戦の背景や意義を解説する傾向が見られた。一方、パキスタン国内メディアは、政府や軍の声明を全面的に支持し、インドの行動を強く非難する論調が中心であった。国際メディアは、両国の主張を併記しつつ、事態の客観的な把握に努め、エスカレーションへの懸念を表明する報道が多かった。特に、両国が核保有国であるという事実は、多くの国際メディアにとって最大の懸念材料として繰り返し指摘された [cite: 9]。

VIII. 専門家による分析と今後の見通し

今回のインドによる「シンドゥール作戦」とそれに続く両国間の緊張激化について、複数の専門家が分析と今後の見通しを示している。

A. 軍事エスカレーションのリスク評価

多くの専門家は、今回の事態がさらなる軍事エスカレーションに発展する現実的なリスクがあると警告している。特に両国が核保有国であるため、偶発的な衝突や誤算が破滅的な結果を招く可能性が懸念されている [cite: 12]。

アソシエイテッド・プレスに寄稿した南アジア専門家のマイケル・クーゲルマン氏は、今回のミサイル攻撃はインドによるここ数年で最も強度の高いものの一つであり、パキスタンの反応も「確実にパンチが効いたものになるだろう」と指摘。「これらは核兵器を抑止力として持ちながらも、互いに相当規模の通常戦力を展開することを恐れない2つの強力な軍隊だ。エスカレーションのリスクは現実のものであり、急速に増大する可能性がある」と述べている [cite: 12]。

スティムソン・センターのフランク・オドネル氏は、2019年の衝突以降、両国の意思決定者は紛争開始とエスカレーションに対するリスク許容度が高まっていると分析。しかし、「意図しないエスカレーションを引き起こす可能性のある正確な行動について、明確な相互理解がない」と警鐘を鳴らしている。

過去の米国の介入が緊張緩和に役立った例（2019年など）と比較し、現在のトランプ政権の関与が薄い場合、事態が制御不能に陥る危険性を指摘する声もある（ジョン・ミアシャイマー氏）。

B. 「シンドゥール作戦」の戦略的含意

インドの意図：

インドは「シンドゥール作戦」を、パハルガム襲撃事件への報復であり、テロ支援国家としてのパキスタンに対する抑止力回復の試みと位置付けている。作戦名が象徴するように、国内の強硬な世論に応え、断固たる姿勢を示す狙いがあったと考えられる [cite: 10]。インド国防省は、攻撃対象をテロリストのインフラに限定し、パキスタンの軍事施設を避けたことで、「抑制的」かつ「非エスカレート的」な対応であったと主張している [cite: 9]。これは、国際社会の非難を避けつつ、パキスタンに限定的ながらも強力なメッセージを送るという計算があったと見られる。

パキスタンのジレンマ：

パキスタンは、インドの攻撃を「戦争行為」と非難し、報復を宣言しているが、全面的な戦争は避けたいというジレンマを抱えている。国内の強硬派を満足させつつ、国際社会の支持を失わないような対応が求められる [cite: 26]。パキスタンが主張するインド軍機の撃墜や兵士の捕獲といった戦果は、国内向けのアピールとインドへの抑止を狙った情報戦略の一環である可能性が高いが、確証がなければ国際的な信頼を損なうリスクも伴う。

限定戦争の可能性と核の影：

専門家の中には、両国が限定的な通常戦力の行使に踏み切る可能性を指摘する者もいるが、それが核戦争へとエスカレートするリスクは常に存在する。パキスタンは通常戦力でインドに劣るため、戦術核兵器の使用を示唆することでインドの行動を抑止しようとする戦略をとってきた経緯がある。

C. 緊張緩和への道筋と国際社会の役割

多くの専門家は、第三者、特にアメリカの積極的な仲介が緊張緩和に不可欠であるとの見方を示している [cite: 13]。過去の危機においても、アメリカの介入が事態の沈静化に貢献した例がある。

国連や主要国（米、中、露、英、EU、UAEなど）は一様に自制と対話を呼びかけているが、各国の利害関係や影響力には温度差がある [cite: 3]。特に、パキスタンと緊密な関係にある中国の動向は、今後の展開に大きな影響を与える可能性がある。

インドのパハルガム攻撃への報復という「正義の実現」の物語は、国内的には支持を得やすい一方で、国際的にはエスカレーションのリスクを高めるものとして懸念されている。インドが国際社会の理解を得ながら事態を収拾できるかどうかが焦点となる。

パキスタンがインドの主張（テロリストのインフラのみを標的とした限定的攻撃）を受け入れ、抑制的な対応に終始できるか、あるいは国内の圧力により強硬な報復措置に踏み切るかによって、今後の情勢は大きく左右されるだろう。

IX. 結論

2025年5月7日のインドによるパキスタンへの攻撃「シンドゥール作戦」は、4月22日のパハルガム観光客襲撃事件を直接的な引き金とし、両国間の緊張を著しく高めた。インドは作戦を「テロリストのインフラ」に対する限定的かつ非エスカレート的な報復と位置づけ、国際社会への説明と国内世論への配慮を試みている。一方、パキスタンはこれを「戦争行為」と非難し、民間人の死傷を主張、報復を示唆している。両国の主張には大きな隔たりがあり、情報戦の様相も呈している。

現時点（2025年5月7日）では、パキスタンによる大規模な軍事的報復は確認されていないものの、LoC沿いでの砲撃戦は継続しており、予断を許さない状況が続いている。国際社会は一様に自制と対話を求めているが、特にアメリカの仲介努力が今後の事態の推移に影響を与える可能性がある。中国のパキスタンへの強い支持表明は、インドの行動を牽制する一方、ロシアは伝統的な外交ルートを通じた解決を促している。

両国が核保有国であることを踏まえれば、偶発的な衝突や誤算が破滅的なエスカレーションにつながるリスクは依然として高い。インドが「シンドゥール作戦」の名称に込めた報復的正義の物語は、国内的には一定の支持を得るかもしれないが、国際的にはさらなる緊張激化への懸念を招いている。パキスタンがインドの限定的攻撃という枠組みを受け入れ、抑制的な対応に終始できるか、あるいは国内の圧力により強硬な報復措置に踏み切るかによって、今後の情勢は大きく左右されるだろう。

今後48時間以内の両国の軍事的、外交的動向、そして国際社会の具体的な関与が、この危機的状況の行方を決定づける上で極めて重要となる。継続的な情報収集と慎重な分析が求められる。