2025年6月初旬 世界のビットコイン(Bitcoin)主要ニュースまとめ
2025年6月1日から6日にかけて、世界各地でビットコイン(Bitcoin)に関する重要なニュースが相次ぎました。本レポートでは、海外で報じられた主要なトピックをテーマごとに整理します。その背景や市場への影響、そして投資家への示唆を解説します。
ビットコイン価格、過去最高水準に迫るも一時調整
6月初旬、ビットコイン価格は過去最高値に迫る水準まで上昇しました。6月5日には一時112,000ドル近くまで値を伸ばす展開となりました。 1 しかしその後、約103,000ドルまで急反落し、短期的な調整局面を迎えています。この価格変動の背景には、複数の要因が重なりました。
価格変動の背景
- 大口投資家の利益確定売り
- 急騰によって利益を得た一部の大口保有者(いわゆる「クジラ」)が高値圏で売却しました。利益確定の動きが価格上昇にブレーキをかけました。6月1日には130,000 BTC(約1.4兆円相当)もの巨額のビットコイン移動が検知されており、市場では大口の動向に警戒感が広がっていました。
- 米経済指標への警戒
- 6月6日に発表予定の米国雇用統計など、重要指標を前に投資家の関心が高まりました。結果次第では金融政策の方向性にも影響するため、一時的にリスクを回避する売りが出た模様です。
- 6月のアノマリー(季節要因)
- 過去の統計上、6月は仮想通貨市場が弱含みになりやすい月とされています。ビットコインの6月の平均リターンは約-1.9%と低調です。こうした季節的な傾向を意識した売りも一因と考えられます。
- 出来高の低下と投資家心理
- 価格上昇の後半には取引量が減少し、市場参加者が様子見ムードに転じていました。商いが薄い中では価格変動が大きくなりやすく、少ない売りでも下落圧力となりました。
- ハイテク株動向の波及
- 同時期に米国のハイテク株が下落したことも影響しました。例えばテスラ株は6月5日に5%近く急落しました。 4 「ハイテク市場の不調時には仮想通貨もつられやすい」というパターンが現れました。
このように短期的な売り材料が重なりましたが、大局的には強気相場の流れは維持されています。中規模のクジラのウォレットでは、直近1週間で79,000 BTC以上の買い増しが確認されています。 5 下落局面でも依然として強い「押し目買い」の意欲が存在することが示唆されています。急騰後の調整は過去にも繰り返された健全な価格推移と捉え、長期的な視点を持つことが重要です。
米金融政策の追い風、利下げ観測とビットコイン
ビットコイン市場にとって、金融政策やマクロ経済の動向が大きな追い風となったのもこの期間の特徴です。6月2日、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が講演で金融政策に言及しました。 6
具体的な利下げへの言及は避けましたが、「今後の政策判断は経済指標次第」という慎重な姿勢を示しました。市場はこれをハト派(金融緩和寄り)と受け止めました。 7 その直後からリスク資産に買いが入り、ビットコイン価格も105,000ドル超まで反発しています。
さらに6月6日には注目の米国雇用統計が発表されました。市場予想通り労働市場の伸びがやや鈍化したことが確認されました。 8 これは景気の過熱感が和らぎつつある兆候です。FRBが年内に利下げへ舵を切る期待を一段と高める内容です。 9
もっとも、マクロ経済の要因に頼る相場には不確実性も伴います。今後のインフレ指標が再燃したり、FRB高官がタカ派(利上げ寄り)の姿勢に戻ったりすれば、状況は一変する可能性があります。 10 投資家としては、経済指標や中央銀行の動向に注意を払い、様々なシナリオに備えることが求められます。
トランプ政権の仮想通貨戦略とビットコインETF申請
米国では政権交代により、仮想通貨規制に追い風が吹いています。2025年1月に就任したドナルド・トランプ大統領は、「史上初の“クリプト大統領”になる」と宣言し、業界との関係構築に努めてきました。 11
トランプ政権は「戦略的ビットコイン準備」を創設する大統領令を3月に発出しました。国家資産としてビットコイン等のデジタル資産を備蓄する方針です。ビットコインが国家の金融計画の一部と位置付けられた意義は大きく、市場心理にも良い影響を与えています。
規制当局の動きとETF申請
規制当局も歩調を合わせています。証券取引委員会(SEC)のポール・アトキンス新長官は6月上旬、「暗号資産市場の規制を大幅に緩和・明確化することが最優先課題だ」と表明しました。 13 実務面でも、暗号資産企業にとってハードルだった会計上の扱いの改善などが進んでいます。 14, 15 これにより、チャールズ・シュワブなどの大手証券も現物ビットコイン取引の提供を計画しているとされています。 16
このような流れの中、トランプ氏の関連企業もビットコインETF(上場投資信託)への参入に乗り出しました。6月5日、トランプ・メディア&テクノロジー・グループ(TMTG)が、現物ビットコインETFの登録申請書(S-1)をSECに提出しました。 17 申請中のETFの名称は「Truth Social ビットコインETF」です。 19 資産の保管役には大手取引所のCrypto.comが指名されています。 18 承認されれば、個人投資家などが証券口座を通じてビットコインに投資できるようになり、市場の一段の拡大が期待されます。 20
トランプ大統領 vs イーロン・マスク:論争が市場心理に波紋
6月第1週には、米政財界の二大著名人の対立がビットコイン市場に思わぬ波紋を広げました。トランプ大統領とテスラCEOのイーロン・マスク氏の間で、税制改革と財政赤字を巡る公開論争が勃発したのです。 21
この論争で投資家心理は一時的に不安定になりました。ボラティリティ(価格変動性)の高い暗号資産市場では急激な売りが出現しました。結果として、わずか数時間で約8億3000万ドル相当のポジションが強制的に清算される事態となり、多くの投資家が打撃を受けました。 22 この出来事は、政治リスクや有力者の発言が仮想通貨市場に与える影響の大きさを改めて浮き彫りにしました。予測不能なニュース一つで相場が大きく変動するリスクを認識し、適切なリスク管理を徹底することが重要です。
米・エルサルバドル連携強化:ビットコイン外交の新展開
国際的なビットコイン採用に関しても、注目すべきニュースがありました。中米エルサルバドルと米国が、ビットコインを軸にした協力関係を深め始めたのです。エルサルバドルは2021年に世界で初めてビットコインを法定通貨として採用した国です。その同国と、暗号資産推進に舵を切ったトランプ政権との間で公式なハイレベル会合が実現しました。
協力関係の具体的内容
6月5日、ホワイトハウスのデジタル資産顧問会議の責任者であるボー・ハインズ氏がサンサルバドルを訪問しました。そして、エルサルバドルのナジブ・ブケレ大統領と会談しました。 23 双方はビットコインやデジタル資産に関する協調や連携の可能性について話し合いました。 25
特に注目すべきは、米国SECとエルサルバドルのデジタル資産庁(CNAD)が協力する構想です。「クロスボーダー(国境を越えた)規制サンドボックス」を構築することが明らかになりました。 26 エルサルバドルが先行モデルケースとなり、米国が追随する形で両国が協調して規制整備を進める可能性が出てきました。ブケレ大統領の顧問は「数ヶ月以内に両国にとって驚くべき成果が現れるだろう」と、今回の会談の意義を強調しています。 24
伝統金融と暗号資産の融合進む:企業・市場の動向
ビットコインの強気相場の背景には、伝統的な金融業界や企業による暗号資産への参入も大きく寄与しています。6月初旬には、その流れを象徴するニュースが各地で報じられました。
- 英国でのサービス開始: イギリスの大手オンライン証券プラットフォームIGグループが、個人投資家向けの暗号資産現物取引サービスを開始しました。 27 英国上場企業としては初めての試みです。既存のプラットフォーム内でビットコイン現物を直接売買・保有できる環境が整いました。 28, 29, 30
- 米国での大型IPO: 米ドル連動型ステーブルコインUSDCを発行するサークル社がニューヨーク証券取引所(NYSE)に上場しました。6月5日の初取引で株価は公開価格から168%も急騰しました。 31 暗号資産関連企業への株式市場の高い評価を示す出来事となりました。
- 機関投資家の参加拡大: シカゴ・マーカンタイル取引所(CME)におけるビットコイン先物の大口建玉保有者数は、5月末時点で過去最多の217に達しました。 32 市場の厚みが増し、成熟度が高まっていることを示しています。
- 一般企業の活用検討: 米ライドシェア大手のUber(ウーバー)は、自社サービスの決済手段にステーブルコインを導入する可能性について検討段階にあることを明らかにしました。 33
まとめ
2025年6月初旬は、ビットコインを取り巻く市場環境が大きく動いた期間でした。価格面では過去最高値圏への上昇と急な調整がありました。その背後には、米国の金融緩和期待や規制緩和といった強気材料と、大口投資家の利益確定売りや政治リスクといった短期的な不安要素が交錯していました。各国・企業の動きを見ても、ビットコインが主流の資産クラスへと移行する流れは加速しています。しかし、その過程には市場の過熱感や不確実性も伴います。日本人投資家にとっても、この世界的な潮流を理解し、自らの投資判断に活かすことが重要です。今後も国内外のニュースに目を配り、機会とリスクの両方に備える必要があります。
参考文献:引用文献
- 暗号資産市場の変動:今日の価格下落の背景は? (Binance Square)
- トランプ対パウエル:ビットコインの次の一手は? (Cryptorank)
- 暗号資産日報(米州版):トランプ・マスク衝突で揺れるBTC価格、米雇用統計前に反発 (CoinDesk)
- 米銀、規制当局のさらなる承認を待ちつつ暗号資産へ慎重に参入 (ロイター)
- トランプ・メディア、SECにビットコインETFの登録を申請 (Investment Week)
- トランプ氏のTruth Social、現物ビットコインETFローンチに向け次の一歩 (CoinDesk)
- ホワイトハウスの暗号資産責任者ボー・ハインズ氏、エルサルバドルのブケレ大統領と会談しビットコインについて議論 (CoinDesk)
- 英国上場の投資プラットフォームIG、個人顧客に現物暗号資産取引を提供 (CoinDesk)
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