2025年6月1日~6日のイーサリアム主要ニュースまとめ
2025年6月初旬、暗号資産(仮想通貨)市場の主要銘柄であるイーサリアム(ETH)に関して、世界各地で注目すべきニュースが相次ぎました。本稿では、海外で報じられた主要なトピックを市場価格、技術、規制、企業動向の観点から整理し、その背景や市場への影響について、日本の投資家にも分かりやすく解説します。
市場価格と投資家センチメント
6月初旬、イーサリアム(ETH)の価格は1ETHあたり約2,500ドル台で推移し、一時は2,600ドル近くまで上昇しました。 1 市場には強気の見方も広がっています。6月末までにETH価格が3,200ドルから3,400ドルを超えると予測した、200万ドル以上の大規模なオプション取引も報じられました。 2
こうした強気の背景には、5月に実施された技術的なアップグレードの成功や、将来的なイーサリアム現物ETF(上場投資信託)への期待感があります。このETFは、保有するETHをネットワークに預け入れることで報酬を得られる「ステーキング」機能を持つものとして注目されています。 3 実際、後述する「Pectraアップグレード」により、イーサリアムネットワークの処理能力とステーキングの効率は飛躍的に向上しており、投資家心理の改善につながっています。 4
技術アップデートと将来計画
Pectraアップグレードの成功
イーサリアムでは、5月7日に実施された「Pectraアップグレード」が技術面での大きな話題となりました。このアップデートにより、ネットワークの性能が大幅に向上しました。主な変更点は以下の通りです。
- ステーキング上限の拡張: 1人のバリデータ(ネットワークの取引を検証・承認する参加者)が預けられるETHの上限が、従来の32ETHから2,048ETHへと大幅に引き上げられました。これにより、大口の投資家がより柔軟にステーキングに参加できるようになりました。
- データ処理能力の向上: ブロブ(blobs)と呼ばれるデータ処理の仕組みが改善され、ネットワーク全体の処理能力が2倍になりました。
この改良は、ネットワークの処理容量を拡大し、イーサリアムが技術基盤の強化に真剣に取り組んでいることを市場に強く示しました。 5, 6
「L1の10倍スケール」計画
さらに、イーサリアムの共同創設者であるヴィタリック・ブテリン氏は、今後約1年間でネットワークの基盤となるレイヤー1(L1)の性能を現在の10倍程度に引き上げるという大胆な計画を表明しました。 7
この計画は、現在主流となっているレイヤー2(L2)と呼ばれる外部のネットワークへの過度な依存を減らすことを目指しています。L1自体の処理能力を強化することで、イーサリアムのシステム全体の拡張性と信頼性を高める狙いです。 8 この計画が実現すれば、ETHの実用的な需要が拡大し、価値の向上につながると期待されています。
イーサリアム財団の動向
6月4日、イーサリアムの開発を支援する非営利組織であるイーサリアム財団(EF)は、初の包括的な財務管理方針を公表しました。 9 この新方針は、財団の財務運営の透明性と安定性を高めることを目的としています。
主な内容として、財団が保有する総資産に対する年間の運営予算(Opex)を「総資産の15%」に固定し、常に2.5年分の運営資金を手元に確保することが定められました。 10 このルールにより、財団がETHを売却する規模やタイミングを市場が予測しやすくなります。 11, 12
また、財団は保有資産の約81%をETHで維持しつつ、一部の資金をDeFi(分散型金融)プロトコルで運用し、「適切な利回り」を得る戦略も明らかにしました。 13 実際に2025年2月には、約1.2億ドル相当のETHをDeFiプロトコルに供給し、資金の運用利回りを高める試みを始めています。 14, 15, 16, 17
規制・機関投資家の動向
ステーキング機能付きETFの登場
規制面では、米国でイーサリアム関連の新しい金融商品に前向きな動きが見られました。米国のスタートアップ企業2社が、イーサリアムとソラナ(SOL)に連動する新しいETFについて、米証券取引委員会(SEC)から有効承認を取得しました。 18
これらのETFは、単に価格に連動するだけでなく、投資家がETHを預け入れてステーキング報酬を得られる機能を備えた、世界で初めての試みです。専門家は、この「ステーキング可能ETF」の登場により、伝統的な金融とイーサリアムの収益モデルが融合し、機関投資家の参入がさらに進むと指摘しています。米国では、グレイスケール社などが既存のイーサリアム投資信託をETF化し、ステーキング機能を組み込む提案を行っており、今後の主流となる可能性があります。 19, 20
イーサリアムの法的扱いに進展
イーサリアム自体の法的な位置付けについても、明るい材料がありました。2025年にSECが示した新しいガイダンスでは、イーサリアムのように十分に分散化され、実用性が確立した暗号資産は、有価証券に該当しにくいことが示唆されています。 21 これにより、米国市場における規制上の不確実性が解消に向かうとの見方が広がっています。 22
ナスダック上場企業によるETH大量保有
この期間、企業によるイーサリアム採用の画期的なニュースも報じられました。米ナスダック上場企業のシャープリンク・ゲーミング社が、約4億2500万ドルを調達し、自社の主要な準備資産としてETHを大量に保有する戦略に乗り出したのです。 23, 24
ビットコインを企業の準備金として保有する動きは以前からありましたが、ETHを主軸資産として積極的に活用するのは先駆的な事例です。企業の暗号資産活用が新たな段階に入ったことを示す出来事と言えるでしょう。 25, 26 この発表を受けて同社の株価は急騰しており、市場が伝統的な企業によるイーサリアム採用を好感していることがうかがえます。 27
DeFiおよび市場利用動向
DeFi(分散型金融)やステーブルコイン市場でも、イーサリアム関連で注目すべき動きがありました。大手取引所CEX.ioのレポートによると、2025年5月にイーサリアムのメインネット(基幹ネットワーク)上で稼働した自動取引ボットが、約484万件ものステーブルコイン(米ドルなどの法定通貨と価値が連動する暗号資産)の移転を実行しました。その総額は過去最高の4,800億ドルに達したとのことです。 28
取引手数料であるガス代が低下したことも手伝い、他のブロックチェーンに流出していた流動性が一部イーサリアムのメインネットに戻ってきたと分析されています。 29 その結果、2025年に入りメインネット上のステーブルコインの時価総額は11%増加しました。 30 この過程で、米ドルに連動するUSDC(USDコイン)がネットワーク上で最も取引量の多い資産となるなど、安定した価値を持つトークンがエコシステムの主要な利用例の一つとなっています。 31, 32, 33
まとめ
2025年6月初旬は、イーサリアムを取り巻く市場環境が大きく動いた期間でした。価格・技術・制度の各面でポジティブなニュースが相次ぎ、イーサリアムが再び世界的な注目を集めました。これらのニュースは、日本の個人投資家にとっても、イーサリアムエコシステムの将来性やリスクを把握する上で有益な情報と言えるでしょう。各分野で進むイーサリアムの発展と普及の動向を注視し、適切な投資判断につなげていくことが重要です。
参考文献:引用文献
- イーサリアム(ETH)が2,500USDTを突破、24時間で4.26%の減少幅が狭まる (Binance Square)
- 上昇、上昇、そしてその先へ:イーサリアムトレーダー、6月末までにETHが3,400ドルを突破することに数百万ドルを賭ける (CoinDesk)
- ヴィタリック・ブテリン氏、イーサリアムのL1は来年中に10倍にスケールアップすると語る (Benzinga)
- アジア・モーニング・ブリーフィング:ヴィタリック氏の計画はETHを3000ドルに、韓国では暗号資産が株式より「人気」に (CoinDesk)
- イーサリアム財団初の財務方針、解説 (EtherWorld)
- イーサリアム財団、大規模な研究開発再編の中で保守的な財務戦略を発表 (Blockhead)
- イーサリアム財団、ETH売却の新ルール公表 | DeFiで利回り追求も (みんかぶ暗号資産)
- イーサリアム財団が新たな財務方針を発表 (Cointelegraph)
- 新世代の暗号資産ETFに注目、報酬も提供ーウォール街デビュー迫る (Bloomberg)
- SEC、グレイスケールのETFステーキング許可に関する決定を2025年6月までに (Servers.com)
- SECの2025年ガイダンス:どのトークンが有価証券で、どれがそうでないか (Cointelegraph)
- トランプ時代の暗号資産政策:急変と諸刃の剣 (OMFIF)
- SharpLink、Consensys Software Inc.主導の4億2500万ドルの私募増資完了を発表、世界最大の上場ETH保有企業へ (GlobeNewswire)
- 「ETHはBTCを超える」 イーサリアム共同創設者が語る新戦略 (CRYPTO TIMES)
- イーサリアムのボットが4800億ドルのステーブルコイン急増を牽引、ネットワークがDeFiの主役に返り咲く (Cointelegraph)
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