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2025年5月のアルトコイン注目市場動向レポート

2025年5月 アルトコイン市場の最新動向:ビットコイン高騰の波及と注目セクターを解説

1. はじめに:アルトコイン市場に活気、今後の展望は?

2025年5月、暗号資産市場はビットコイン(BTC)の歴史的な高値更新に牽引され、ビットコイン以外の「アルトコイン」市場にも久しぶりに活気が戻りました。 1 特に月初にビットコイン価格が一時11万ドル近くまで上昇した際には、市場全体のリスク選好ムードが強まり、多くのアルトコインが価格上昇や取引量の増加を示しました。 2 5月28日時点で暗号資産全体の時価総額は約489兆円(約3.5兆ドル)に達し、24時間取引高も約14.8兆円と高水準を記録しました。 3

本記事では、2025年5月1日から28日までのグローバルなアルトコイン市場の主な動きを概観し、主要セクター別のトレンド、注目プロジェクト、各国の規制動向、そして今後の見通しとリスクについて、ポイントを絞って分かりやすく整理します。

2. 主要セクター別トレンド:活況のアルトコイン市場

5月は、イーサリアムをはじめとする主要なアルトコインセクターで注目すべき動きが見られました。

イーサリアム(ETH)とレイヤー1/レイヤー2競争

アルトコイン市場の中核であるイーサリアム(ETH)は、5月に入り堅調な上昇を見せました。背景には、大口投資家による買い増しや、2025年の大型アップグレード「Pectra」によるスケーラビリティ向上とスマートアカウント機能導入への期待があります。 5 また、StripeやNasdaqとの提携、分散型取引所Uniswapとの協業など、伝統企業との連携強化もETHの存在感を高めています。イーサリアムのレイヤー2(処理能力向上のための補助的なネットワーク)エコシステムも急成長しており、例えばUniswapのL2ネットワーク「Unichain」は月間取引高100億ドルを突破しました。

一方、ソラナ(Solana)やBNBチェーン、アバランチ(Avalanche)といった他の主要レイヤー1ブロックチェーンも価格を持ち直しました。特にアバランチは、5月後半にかけて大口投資家の資金流入が顕著となり(ネットフロー前週比+380%増)、テクニカル面でも18ヶ月ぶりの下降トレンドからの転換サインが現れました。 8 専門家は、AVAX(アバランチのネイティブ通貨)が特定の価格帯を上抜けば、さらなる上昇余地があると指摘しています。 9

DeFi(分散型金融)の動向とRWA(実物資産のトークン化)

DeFi領域では、分散型取引所(DEX)やレンディングプロトコルの利用が増加傾向を示しました。最大手DEXの一つであるUniswapのL2ネットワーク「Unichain」の月間取引高が100億ドルに達し、UNIトークンへの期待感も高まっています。また、AAVEトークンが24時間で24%急騰するなど、DeFi銘柄への資金循環も見られました。 12

RWA(実物資産のトークン化)もDeFi分野で大きな注目を集めています。米Krakenは、ソラナ上で米国株やETFを24時間取引可能なトークンとして提供開始すると発表。 13 Securitizeやアリババ系列のAnt DigitalもRWA対応プラットフォーム構築計画を発表するなど、トークン化された国債やコモディティを扱う動きが本格化しています。 14 これら伝統金融企業の参入は、堅牢なDeFiエコシステムを持つイーサリアムへの信頼感を示しており、「イーサリアムはブロックチェーン界のマイクロソフト」との評価も聞かれます。

NFT・GameFi(ブロックチェーンゲーム)の動向

NFT市場は、2025年に入り取引低迷が指摘されていましたが、5月中旬には一部で取引量の持ち直しが見られました。CryptoSlamのデータによると、5月第3週のNFT総取引額は前週比+17.16%増の1億3070万ドルに達し、新規購入者数も大幅に増加しました。 17 イーサリアム基盤のNFTが市場シェア首位を維持する一方、ビットコイン上のOrdinals NFTも存在感を増しています。 18 市場参加者は、より実需や付加価値のあるプロジェクトを選別する傾向が強まっています。

GameFi分野も、2021年の熱狂は沈静化したものの、ユーザー層を着実に伸ばしています。2025年第1四半期時点でGameFi関連ゲームの日次アクティブユーザー数は580万人超と報告され、弱気相場下でも成長セクターとなっています。 20 近年のプロジェクトは、ゲーム自体の娯楽性や持続可能性に重きを置いており、高品質なタイトルが登場しています。 21

ミームコインと新興セクター(AI・RWAなど)

5月はミームコインの物色熱も根強く残りました。代表的なドージコイン(DOGE)やシバイヌ(SHIB)は緩やかに上昇しましたが、過去最高値からは大きく値を下げたままです。 24 新興ミームトークンPepe(PEPE)は、5月第1週に大口投資家による買い増しが報告され話題となりました。 25 しかし、ミームコインは基本的に投機対象であり、価格変動リスクが高い点に注意が必要です。

AI関連トークンも新興セクターとして台頭しています。5月にはAIトークン市場の時価総額が1週間で100億ドル近く急増し、価格が倍以上に高騰した銘柄も複数出現しました。 27 また、RWA(実物資産のトークン化)分野では、伝統金融機関の本格参入が表面化。SecuritizeやAnt DigitalがRWA特化型プラットフォーム構築を発表し、数兆ドル規模の不動産・債券等をブロックチェーンで扱う計画が伝えられています。Krakenによる株式トークン取引開始や、Robinhoodによる証券型トークン取引網構築の動きもあり、RWAセクターは活発化しています。 15

3. 個別の注目アルトコイン・プロジェクト

5月に特に話題となったアルトコインやプロジェクトをいくつか紹介します。

  • アバランチ(Avalanche, AVAX): 高速スマートコントラクトL1。月末にかけて大口投資家の買い増しが鮮明になり、ネット流入量は前月比+380%に達しました。テクニカル指標でも長期下降トレンドからの上方ブレイクアウトが確認され始め、本格反騰への期待が高まりました。
  • トロン(Tron, TRX): 米国で「ステーキング報酬付TRX現物ETF」が提案され、SECが審査に入ったことで注目を浴びました。これはTRX現物の価格連動に加えステーキング利回りも提供する世界初のETFであり、新任SEC委員長下の柔軟な姿勢の表れと受け止められました。
  • ペペ(Pepe, PEPE): カエルがモチーフのミームトークン。5月初旬に大口投資家による買い増しが報じられ、価格底打ちへの期待が広がりました。依然として不安定な値動きですが、ミームコインブームの象徴として注視されています。

4. 規制・政策動向:整備進むも不透明感残る

5月は世界各国で暗号資産に関する規制整備が進展しました。米国では、包括的暗号資産法案「GENIUS法案」(米国ステーブルコイン法案)が上院で大きく前進。5月21日、審議入りが賛成多数で承認され、連邦レベルの規制枠組み具体化へ動き出しました。 34 この法案はステーブルコイン発行者への準備資産・監査・情報開示義務などを定めるもので、利用者保護と金融安定、イノベーション促進を狙います。 35 36 今後の下院審議が注目されます。

また、米国SECでは委員長が交代し、新任のポール・アトキンス氏が暗号資産に比較的寛容な姿勢を示しています。これにより、イーサリアム現物ETFやその他アルトコイン金融商品の承認期待も高まっています。

欧州では、包括規制MiCA(暗号資産市場規制)が2024年末より施行段階に入りました。 38 発行体やサービスプロバイダーに対し登録義務や市場操縦禁止などを課し、投資家保護と市場の健全性確保、イノベーション促進を目指します。 39 EU各国はMiCAに基づくライセンス制度策定を進めています。

アジアでは、香港が5月21日にステーブルコイン規制法を可決し、発行体ライセンス制を導入しました。 40 香港金融管理局(HKMA)の免許取得や十分な準備資産保有などが求められます。 41 42 日本やシンガポールも対策強化と業界振興を図っており、世界的に「育成と統制の両立」へと規制アプローチがシフトしつつあります。 45

5. 今後の注目点と短期的見通し:「慎重な強気」

2025年初から続いたビットコイン主導の相場は、5月後半に入り「アルトコインシーズン」到来への期待感が高まりつつあります。アルトコインシーズン指数は5月上旬の低迷から中旬には上昇し、ビットコイン一強体制に変化の兆しが出ています。 46 一部アナリストからは、アルトコイン市場で1日40%超の急騰が当たり前になる可能性を示唆する強気な声も聞かれます。 47

しかし、楽観一辺倒ではなく慎重な見方も依然根強いです。個人投資家の本格参入は限定的で、短期的な利ざや追求の傾向が強まっているとの分析もあります。 50 典型的な「ビットコイン上昇→遅れてアルト急騰」パターンが崩れつつあるとの見方もあり、資金流入は一部有望プロジェクトに限られるか、短期的な循環物色に留まる可能性も考えられます。

短期的な注目イベントとしては、規制面の行方(米GENIUS法案、ETH現物ETF等)が市場マインドに影響を与えるでしょう。マクロ経済要因(米金融政策、地政学リスク等)も引き続き重要です。総じて短期見通しは「アルトコイン市場は慎重な強気」と言えます。追い風が続けば出遅れアルトへの資金流入が期待できますが、弱気材料が出ればリスクオフで資金が引き上げられやすい状況です。

6. おわりに:変動リスクと中長期的視点の重要性

2025年5月のアルトコイン市場は、ポジティブなムードが広がりつつも、依然として高い変動リスクと表裏一体であることを再認識させられました。過去数ヶ月でも主要アルトが急落する局面があり、アルトコイン投資の値動きの激しさを示しています。これらのリスクは今後も常に存在し、特に時価総額の小さいアルトコインほど一夜にして暴騰・暴落する可能性があります。また、規制当局の方針転換、法執行、ハッキング、プロジェクト破綻など内在するリスク要因も多数あります。

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