2025年6月1日〜7日の世界債券市場・国債市場重要ニュース
2025年6月第1週、世界の債券市場は各国中央銀行の金融政策や重要な経済指標の発表を受けて、大きく変動しました。欧州中央銀行(ECB)が追加利下げに踏み切る一方、米国では予想を上回る雇用統計の結果を受けて長期金利が急騰するなど、金融政策の方向性の違いが鮮明になりました。
- 1. ECBが追加利下げを発表、インフレ鈍化で一時停止を示唆(6月5日)
- 2. 米雇用統計が予想上回る増加、利回り急上昇(6月6日)
- 3. FRBは利下げ見送りか、トランプ大統領は大幅利下げを要求(6月7日)
- 4. 日銀、国債買入れ縮小ペースの緩和を検討か(6月4日)
- 5. インフレ再燃に英中銀が慎重姿勢(6月7日)
- 6. 中国、香港で人民元建て国債を発行、需要は好調(6月4日)
- 7. インド準備銀行が予想を上回る0.5%の利下げ(6月6日)
- 8. ブラジル中銀総裁が利上げ停止を示唆か(6月7日)
- 9. フィッチがアフリカ輸出入銀行を格下げ(6月4日)
- 10. 主要国の超長期国債利回りが軒並み急騰(6月初旬)
- 参考文献:引用文献
1. ECBが追加利下げを発表、インフレ鈍化で一時停止を示唆(6月5日)
欧州中央銀行(ECB)は政策理事会で、追加の利下げを決定しました。これは過去1年間で8回目となります。同時に、少なくとも翌月は金融政策を据え置き、状況を見守る方針を示しました。ユーロ圏のインフレ率が目標とする2%を下回ったことを受けた金融緩和策です。 1 この発表後、ユーロ圏の長期金利は低下し、債券市場は安定を取り戻しました。
2. 米雇用統計が予想上回る増加、利回り急上昇(6月6日)
米国労働省が発表した5月の雇用統計では、非農業部門の雇用者数が市場予想を上回る13万9000人増となりました。失業率は4.2%で横ばいでした。 2 この労働市場の底堅さから、年内の利下げ観測が後退しました。その結果、米国の長期金利の指標となる10年物国債の利回りは、前日比で約0.065%ポイント(6.5ベーシスポイント)上昇し、4.46%に急騰しました。短期金利の指標である2年債との金利差(長短金利差)も、2019年以来のプラスに転じました。
3. FRBは利下げ見送りか、トランプ大統領は大幅利下げを要求(6月7日)
米連邦準備制度理事会(FRB)の当局者は、安定した雇用指標を受け、6月17日~18日に開催されるFOMC(連邦公開市場委員会)で政策金利を据え置く方針を示唆しています。市場も、9月と12月にそれぞれ0.25%の利下げがあるとの見通しを織り込んでいます。 3
一方で、トランプ大統領は自身のSNSで「一気に1%利下げを」とFRBに異例の圧力をかけました。インフレが再燃した場合は、再び利上げすればよいと主張しています。FRB高官は「足元では政策を据え置く好機だ」と述べ、貿易関税の影響などを見極める慎重な姿勢を示しています。
4. 日銀、国債買入れ縮小ペースの緩和を検討か(6月4日)
関係者によると、日本銀行は来年度以降の長期国債の買い入れ(量的緩和政策の一環)の縮小ペースを緩める案を検討しています。 4 先月、日本の30年債など超長期国債の利回りが財政悪化への懸念から過去数十年で最高の水準に達し、市場が動揺したことに対応する動きです。最終的な判断は、6月16日~17日の金融政策決定会合で下される見通しです。
5. インフレ再燃に英中銀が慎重姿勢(6月7日)
イングランド銀行(BoE)の金融政策委員会メンバーであるメーガン・グリーン氏は、最近の英国のインフレ率の上振れに対し「楽観は禁物だ」と発言しました。 5 英国では4月に予想外のインフレ再加速が起き、利下げのペースが遅くなるとの見方が市場で浮上しています。BoEは5月に政策金利を0.25%引き下げ4.25%としましたが、グリーン氏は、米国の関税措置の影響もあり、本来なら金利据え置きに傾いていたと述べています。
6. 中国、香港で人民元建て国債を発行、需要は好調(6月4日)
中国財政省は、香港特別行政区で125億元(約1.74億ドル)相当の人民元建て国債を発行しました。今年度第3弾となる今回の発行では、2年物(利率1.49%)から10年物(利率1.75%)まで計4種類が売り出されました。 6 応募総額は発行額の約3.96倍に達し、旺盛な需要が集まりました。中国政府は、年内に合計680億元の香港向け国債発行を計画しています。
7. インド準備銀行が予想を上回る0.5%の利下げ(6月6日)
インド準備銀行(RBI)は、政策金利を0.50%引き下げ、5.50%とするサプライズを発表しました。市場予想は0.25%の利下げでした。 7 これで3会合連続の利下げとなります。4月の小売物価上昇率が約6年ぶりの低い水準だったことを踏まえ、 8 大胆な金融緩和で景気を下支えする狙いです。発表後、インドの短期国債の利回りは低下(価格は上昇)しました。
8. ブラジル中銀総裁が利上げ停止を示唆か(6月7日)
ブラジル中央銀行のガブリエル・ガリポロ総裁は講演で、「柔軟性と慎重さが鍵だ」と述べました。6月17日~18日の次回金融政策会合では、経済データ次第であらゆる選択肢があり得るとの姿勢を強調しました。 9 ブラジル中銀は高止まりするインフレに対応するため、これまで6回連続で利上げを行っており、政策金利は約20年ぶりの高水準に達しています。総裁の発言は、利上げサイクルの停止の可能性を示唆するものとして、債券市場で注目されました。
9. フィッチがアフリカ輸出入銀行を格下げ(6月4日)
格付け会社のフィッチは、アフリカ輸出入銀行(Afreximbank)の長期信用格付けを「BBB-」に1段階引き下げ、見通しを「ネガティブ(弱含み)」としました。 10 ガーナやザンビアなど、債務再編中の国向けの融資で損失リスクが高まっていることなどが要因です。この格下げを受け、同行が発行したドル建て債券の価格は急落し、今年1月以来の安値を付けました。
10. 主要国の超長期国債利回りが軒並み急騰(6月初旬)
6月第1週時点で、米国、日本、英国など主要国の超長期ゾーン(償還までの期間が30年以上)の国債利回りが、そろって大幅に上昇し、数年来の高水準に達しました。 11 各国の巨額の財政赤字による国債増発やインフレへの警戒感を背景に、投資家の慎重な姿勢が強まっています。安全資産とされる超長期債でも、投資家がより高い利回りを要求する状況が浮き彫りとなりました。
参考文献:引用文献
- ECBは米国の関税による物価上昇に注意すべき、とシュナーベル氏 (ロイター)
- 速報:5月の米雇用者数の伸びは鈍化、失業率は横ばい (ロイター)
- FRB、米労働市場が冷え込むも崩壊せず、利下げ急がずとの見方 (ロイター)
- 日銀、来年の債券テーパリングのペース鈍化を検討、関係者発言 (ロイター)
- イングランド銀行、インフレの山に「楽観的でない」とグリーン氏 (ロイター)
- 中国財政省、香港で125億元の国債を発行 (人民日報オンライン)
- RBIの50bp利下げで短期債は上昇、長期利回りは抑制されたまま。今後の見通しは? (エコノミック・タイムズ)
- インド中銀、インフレ率が予想を下回り3会合連続の利下げを実施の可能性 (ロイター)
- ブラジル中銀総裁、金利決定を前に柔軟性と慎重さを約束 (ロイター)
- フィッチ、アフレキシムバンクを「ジャンク」の一段上に格下げ (ロイター)
- 投資戦略フォーカス 2025年6月 (BNPパリバ)
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