経済・ビジネス

【2025年6月前半】世界の主要 経済ニュースまとめ

2025年6月前半 世界の経済ニュース解説:各国の金融政策、インフレ動向から地政学リスクまで

2025年6月前半の世界経済は、インフレの鈍化という明るい兆しが見える一方で、中東の地政学リスクや世界的な投資の低迷といった懸念材料が交錯する複雑な様相を呈しました。欧米の中央銀行が金融政策の舵取りに慎重な姿勢を見せる中、アジアではインドが高い成長を維持し、中国はまだら模様の回復を続けています。以下に、主要な経済ニュースを分かりやすく解説します。

欧州中央銀行(ECB)が追加利下げ、ただし一時停止も示唆(6月5日)

欧州中央銀行(ECB)は、主要な政策金利である預金ファシリティ金利を0.25パーセントポイント引き下げ、2.0%としました。 1 ユーロ圏のインフレ率が目標の2%に低下したことを受けたもので、2024年半ばから数えて8回目の利下げとなります。 2

ECBのクリスティーヌ・ラガルド総裁は、今回の決定を受けて「銀行は良いポジションにある」と述べ、追加の利下げを当面見送る可能性を示唆しました。物価が安定しつつある中、ECBは景気への過度な刺激を避けつつ、停滞気味の欧州経済を支えることを目指しています。市場は7月の利下げは見送られると予想しており、この決定は欧州の景況感や投資を後押しする可能性があります。

米国のインフレが鈍化、FRBの目標に近づく(6月12日)

5月の米国の消費者物価指数(CPI)は前月比でわずか0.1%の上昇に留まり、インフレが落ち着きつつあることを示しました。 3 年間インフレ率は2.4%と、米連邦準備制度理事会(FRB)が目標とする2%に近づき、2021年以来の低い水準となりました。ガソリン価格の下落が、家賃の上昇を相殺した形です。

この穏やかなインフレ率は、FRBが6月半ばの会合で金利を据え置くとの市場の期待を裏付けるものとなりました。しかしエコノミストは、原油価格の上昇や新たな輸入関税が、年後半に再びインフレを押し上げる可能性があると警告しています。

中国経済はまだら模様の回復、消費は好調も工業生産は減速(6月16日)

5月の中国経済に関する最新データは、二面性のある回復状況を明らかにしました。工業生産は前年同月比で5.8%増と、この半年で最も遅いペースに減速。輸出の弱さや世界的な需要の軟化が、工場生産の重荷となっていることを示しています。 4

その一方で、個人消費は予想を上回る好調さを見せました。小売売上高は6.4%増と4月から加速し、2023年後半以来最も高い伸びを記録しました。連休中の消費や政府の奨励策が後押ししたとみられます。このまだら模様の結果は、中国政府が景気刺激策をさらに強化する必要がある可能性を示唆しています。 5

中東情勢の緊迫化で原油価格が急騰(6月15日)

イスラエルとイラン間の突然の軍事衝突は世界市場に衝撃を与え、原油価格が急騰しました。ブレント原油先物は、戦闘が始まった金曜日には約7%も上昇しました。 6

イスラエルによるイランのエネルギーインフラへの攻撃や、イランの報復攻撃は、中東の石油供給が滞るのではないかとの懸念を高めました。投資家は金や米ドルのような安全資産に資金を移し、株式先物は下落しました。エコノミストは、紛争による持続的な原油高が再び世界のインフレを加速させ、各国中央銀行の物価安定に向けた努力を複雑にする可能性があると警告しています。

アルゼンチンのインフレ率が5年ぶりの低水準に(6月12日)

長年、深刻なインフレに苦しんできたアルゼンチンで、物価上昇率が2020年以来の最も低い水準まで鈍化し、希望の兆しが見えています。5月の月間インフレ率はわずか1.5%で、この5年以上で最も低い伸びとなりました。 7

この物価の安定は、2024年後半に就任したハビエル・ミレイ大統領の政策の成果とされています。ミレイ政権は、厳格な緊縮財政、歳出削減、そして中央銀行による紙幣増刷の抑制といった政策を推し進めてきました。これらの改革の中で、国際通貨基金(IMF)から200億ドルの融資も確保しています。依然として物価は高いものの、この急激なインフレ鈍化は前向きな兆候と受け止められています。

エネルギー業界で記録的な買収提案:ADNOCがサントスに190億ドル(6月16日)

エネルギー分野で、国境を越えた大規模な企業買収が提案されました。アブダビの国営石油会社であるADNOCが率いる国際コンソーシアムが、オーストラリア第2位のガス生産会社であるサントス社に対し、現金187億米ドルでの買収を提案しました。 10

この買収が実現すれば、オーストラリア史上最大級の現金買収となります。この取引は、ADNOCが液化天然ガス(LNG)事業を世界的に拡大する戦略の一環です。ただし、オーストラリアの規制当局が、国の戦略的なエネルギー資産が外国企業の手に渡ることに懸念を示しており、買収の承認にはまだハードルが残っています。

世界的な直接投資の落ち込みに警鐘(6月16日)

世界銀行の新しい報告書によると、海外直接投資(FDI)の世界的な流れが滞っているという、憂慮すべき傾向が明らかになりました。 12

2023年、発展途上国へのFDIは2005年以来の低水準に落ち込み、先進国への投資も1996年以来のレベルまで減少しました。この背景には、貿易障壁の高まりや地政学的な緊張、経済の不確実性があり、企業が国境を越えたプロジェクトに慎重になっていることが挙げられます。世界銀行は、この投資の落ち込みが、特に貧しい国々におけるインフラ整備や雇用創出、気候変動対策への資金調達を危険にさらすと警告しています。


参考文献:引用文献

コメント

タイトルとURLをコピーしました