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G7サミット2025 カナダ開催 主要ポイント

G7サミット2025 カナダ開催:北米が注目する理由と主要ポイントを解説


2025年6月15日から17日にかけて、カナダのアルバータ州カナナスキスでG7(主要7カ国首脳会議)サミットが開催される予定です。カナダが議長国を務めるのは7回目で、G7サミットが50周年を迎える節目の年でもあります。世界情勢が大きく変動する中、このサミットは特に北米で大きな注目を集めています。本記事では、G7サミット2025の開催背景、予想される主要議題、主要国首脳の動向、そして期待される成果とG7の役割について、ポイントを絞って分かりやすく解説します。

開催国・時期・開催地と北米での注目背景

2025年のG7サミットは、カナダのアルバータ州カナナスキスで、6月15日から17日にかけて開催されます。カナナスキスは、カナダが前回議長国を務めた2002年にもサミットが開催された場所です。カナダにとっては、自国の外交的な優先課題を推進し、国際舞台での存在感を示す絶好の機会となります。 3 また、G7サミットが創設から50周年を迎えることも、その意義や成果に対する関心を一層高めています。

主要議題の予想とその背景

2025年のサミットでは、以下のような世界的な課題が主要議題となると予想されています。

  • 地政学的課題(ウクライナ、中東、インド太平洋など): ロシアによる侵攻が続くウクライナ情勢は最重要議題となる見込みです。G7は引き続きウクライナへの断固たる支援を表明し、公正な和平の実現をロシアに要求すると考えられます。中東情勢では、ガザ危機後の人道支援や恒久的な和平プロセスへの支持が議論されるでしょう。また、「自由で開かれたインド太平洋」の維持、中国による一方的な現状変更の試みや台湾海峡での軍事的圧力への反対、北朝鮮の核・ミサイル開発問題なども主要なテーマとなる見通しです。 4
  • 経済安全保障(サプライチェーン、対中政策、先端技術管理など): 新型コロナウイルスのパンデミックや地政学リスクを受け、主要物資のサプライチェーン(供給網)強靭化が重要議題です。特にクリーンエネルギー移行に不可欠なレアメタルなどの重要鉱物確保では、中国への過度な依存を避けるための供給網多角化で協調が図られると見られます。 9 中国の不公正な貿易慣行や先端技術の輸出管理についても議論されるでしょう。 11 さらに、AI(人工知能)や量子技術など先端技術の国際的なルール作り(ガバナンス)も重要な議題となります。 12
  • 気候変動・エネルギー: パリ協定の目標達成やカーボンニュートラル(温室効果ガス排出実質ゼロ)への道筋が引き続き重要テーマです。再生可能エネルギー導入拡大、石炭火力の段階的廃止、気候変動対策資金の拠出などでG7のリーダーシップが期待されます。しかし、米国の政権交代により気候政策に対する温度差が生じ、共同声明の文言調整が難航する可能性も指摘されています。 14
  • 安全保障と軍縮: ウクライナ戦争を機に核兵器使用の危機感が高まる中、G7広島サミット(2023年)で採択された「核軍縮に関する広島ビジョン」の継承などが議論される見込みです。宇宙・サイバー空間における新たな安全保障課題や、テロ対策、新興技術を悪用したハイブリッド戦争(軍事力と非軍事力を組み合わせた複合的な攻撃)への対処なども重要なテーマです。 15
  • 民主主義と人権: G7共通の理念である「自由で開かれた社会」の擁護も主要議題です。ミャンマーの軍事情勢や、ハイチ、アフリカ地域の治安悪化、人権侵害問題、そして中国やロシアによる民主主義国家への外国干渉や偽情報拡散への対策などが協議される見通です。 16

主要国首脳の動向とG7への影響

2024年から2025年にかけて主要G7各国で選挙が相次ぐため、サミットに参加する首脳陣の顔ぶれが変わる可能性があります。これにより、G7の議論や結束に影響が出ることが予想されます。

  • アメリカ合衆国: 2024年の大統領選挙の結果、政権交代が起きた場合、G7内の力学に最も大きな変化をもたらす可能性があります。仮にドナルド・トランプ氏が大統領に復帰した場合、「アメリカ第一」の立場から貿易や気候変動問題で厳しい要求を突きつけ、共同声明の合意形成が難航するかもしれません。 18
  • イギリス: 2024年末までに総選挙が予定され、労働党政権が誕生する可能性が指摘されています。この場合、気候変動対策や欧州との協調に前向きな姿勢が強まると見込まれます。 21
  • 日本・ドイツ・カナダ: これらの国々でも選挙や政権の動向が注目されますが、外交の基本方針に大きな変化はないと予想されるものの、首脳交代があればG7での力関係や議論の進め方に影響が出る可能性があります。 22

主要国での首脳交代はG7に新しい風をもたらす一方で、各国の政策優先順位の違いが調整を難しくする可能性もあります。特に米国の政権交代はG7の結束にとって試練となり得ます。しかし、他のG7各国は多国間協調を重視し、「自由主義陣営の団結」を再確認する場になるとの期待もあります。

招待国(アウトリーチ)とその意義

G7サミットでは、加盟7カ国とEU以外に、アウトリーチ(G7の枠組み外の国や国際機関との対話)参加国や国際機関が招待されます。2025年も、ブラジルや南アフリカといったG20議長国を務める主要新興国の首脳や、ウクライナのゼレンスキー大統領、オーストラリアのアルバニージー首相、そして国連事務総長などの国際機関の長が招待される見通しです。 25

こうしたアウトリーチ招待の意義は、G7が自らの正当性と国際的な影響力を高める点にあります。7カ国だけではカバーしきれない新興国・途上国の視点を取り入れることで、議論の代表性を補完し、地球規模課題の解決に弾みをつけます。特に気候変動やパンデミック対応などでは、多くの国の協力が不可欠であり、招待国との対話はそのための重要な足掛かりとなります。 27

期待される成果とG7の役割

G7サミット2025に期待される成果としては、まず、サミットの締めくくりに採択される共同声明(コミュニケ)があります。これは、経済、安全保障、人権など幅広い分野でのG7の協調方針を示すもので、国際社会の議論の方向性にも影響を与えます。ただし、米国の政権交代の影響などで共同声明の調整が難航する懸念も一部で指摘されています。

また、カナダが議長国として主導する具体的なプロジェクトや資金拠出も期待されます。過去のカナダ議長サミットでは、紛争下の女性教育支援などで大きな成果を上げており、2025年もウクライナ復興支援、気候変動対策資金、先端技術のガバナンスなどに関する新たな国際的取り組みが立ち上げられる可能性があります。

G7の大きな役割の一つは、世界の潮流に対して先進民主主義国としての方針を示す「舵取り役」となることです。G7の合意内容は、その後のG20や国連など、より包括的な国際会議の場での議論を先導することが多く、国際的なルールや基準作りの基盤ともなります。一方で、G7のメンバー構成が現代の世界経済の実態を必ずしも反映していないとの批判もあり、その代表性や正当性を巡る議論も続いています。G7としては、アウトリーチ活動などを通じて包摂性を高めつつ、具体的な成果を通じてその存在意義を示していく必要があります。 39

議長国カナダの戦略とリーダーシップ

2025年の議長国であるカナダは、伝統的に多国間協調を重視する外交戦略を取ってきました。今回のサミットでも、「すべての人々に恩恵が行き渡る経済の構築」「気候変動との闘い」「急速に進化する技術の適切な管理」といった共通の優先課題を、各国と連携して推進する姿勢を明確にしています。 41

特に、人権と民主主義の擁護、包摂的な経済成長、気候変動対策、そして国内の重要課題でもある先住民との和解といった分野で、カナダならではのリーダーシップを発揮することが期待されます。カナダは他国間の意見調整や合意形成に長けており、対立よりも妥協点を探る「橋渡し役」としての役割が注目されます。

市民社会の関与と世論の影響

G7サミットには、公式な政府間プロセスとは別に、市民社会やNGO(非政府組織)も様々な形で関与し、政策提言や問題提起を通じて影響を与えようとします。Civil 7 (C7) などのエンゲージメント・グループは、サミット前に具体的な政策提言をまとめ、G7首脳に提出します。 43 2025年も気候変動、経済的正義、人道支援、持続可能な開発など多岐にわたる提言がなされています。

一方で、G7サミットは歴史的に反グローバリゼーション団体などによる大規模な抗議活動の対象ともなってきました。2025年もカナダ各地で抗議の動きが報じられており、サミット期間中には開催地近郊でデモやカウンターサミット(対抗会議)が計画されています。 47 警察当局は表現の自由を尊重しつつも、厳重な警備体制を敷き、治安維持とのバランスを図るとしています。

G7首脳の言動は各国メディアで報じられ、国内の支持率にも影響するため、首脳たちは国際社会への責任あるリーダーシップと自国の利益のバランスに配慮した発言を心がけるでしょう。カナダ議長国の下、G7がどのような協調と成果を示し、それが世界にどのような影響を及ぼすのか、注目されます。

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