2025年6月第1週 世界のアルトコイン・ミームコイン主要ニュース
2025年6月初旬(6月1日~6日)にかけて、暗号資産(仮想通貨)市場では、ビットコインやイーサリアム以外のアルトコイン、そしてミームコインに関する様々な重要ニュースが世界で報じられました。本レポートでは、価格動向、規制・政策、技術動向、企業による採用事例、そしてミーム文化といった観点から、この期間の主要なトピックを解説します。
アルトコイン市場の価格動向
6月第1週は、暗号資産市場全体が上昇基調となりました。それに伴い、主要なアルトコイン(ビットコイン以外の暗号資産の総称)も価格を伸ばしました。特にドージコイン(DOGE)は、市場全体のリスク選好の高まりを背景に価格が上昇しました。6月3日時点で約0.20ドルに達しています。 1 これは、週末に発生した大規模なロスカット(強制的なポジションの清算)を経て投資家心理が改善し、買いが集まったことが背景にあります。 2
一方で、一部のアルトコインには調整の動きも見られました。新興レイヤー1(ブロックチェーンの基盤層)プロジェクトであるSui(SUI)では、6月1日に約4,400万枚のトークンが市場に放出されました。これは総供給量の2%に相当する「ロックアップ解除」によるものです。 3 SUIの価格は5月初旬の高値から約21%下落し、解除直後も上値の重い展開となっています。 4 市場では、新規供給による売り圧力を懸念する声があります。その一方で、現物市場での買い支えによるショートスクイーズ(空売りの買い戻しによる価格急騰)への期待も指摘されています。 5, 6
規制・政策をめぐる動き
暗号資産に対する規制面でも、各国・地域で重要な発表が相次ぎました。
アメリカ:証券規制の明確化
米国証券取引委員会(SEC)は、暗号資産トークンが有価証券に該当するかどうかの新たな指針を公表し、6月初めにその内容が注目されました。 7, 8 この指針では、1946年に確立された「ハウイテスト」という基準を現代に合わせて更新し、以下の3点を重視するとしています。 9, 10
- トークン販売時の状況:購入者に対し、投機的な利益を強調して販売されたか。
- トークンの実用性:分散型ネットワーク上で、実際に実用的な使い道があるか。
- 発行体の関与度合い:プロジェクトチームが、トークンやネットワークをどの程度管理しているか。
SECは、中央集権的な管理体制や、実用性が乏しいトークンには厳しく対処する姿勢です。 11, 12 逆に、完全に裏付け資産を持つステーブルコイン(米ドルなどの法定通貨と価値が連動する暗号資産)や、イーサリアムのように分散化が進んだトークンは、証券に該当しにくい例として挙げられました。 13
欧州:MiCA規制の適用範囲
欧州連合(EU)では、新たな暗号資産規制の枠組みであるMiCA(暗号資産市場規制)の適用範囲について重要な言及がありました。アイルランド中央銀行の高官によると、ビットコインやイーサリアムのように中央集権的な発行主体がいない暗号資産は、MiCAの直接的な規制対象外になるとのことです。 14
MiCAは、発行主体が明確なトークン、特にステーブルコインなどを対象とする規制です。 15 ビットコインやイーサリアムは、この定義に当てはまらないため、規制の範囲外と説明されました。 16, 17, 18 ただし、これらの資産も各国の既存の法律の下で、引き続き監視されることになります。 19, 20
スイス:税務情報の国際共有
スイス政府は、暗号資産に関する税務情報を他国と自動的に交換する国際的な枠組みに加わる計画を発表しました。 21 これにより、74カ国との間で、居住者の暗号資産取引や保有に関する情報が共有されます。この動きは、各国が協調して暗号資産による課税逃れに対処する流れを強めるものです。長期的には、市場の透明性と信頼性を高める効果が期待されます。 22
韓国:親暗号資産派リーダーの誕生
アジアでは韓国の動向が話題となりました。6月初旬の大統領補欠選挙で、暗号資産に積極的な李在明(イ・ジェミョン)氏が新大統領に選出されました。 23 李氏は、韓国でも暗号資産ETF(上場投資信託)を解禁することに前向きな姿勢を示しています。また、ステーブルコイン規制の明確化など、デジタル資産基本法の整備を加速させる意向です。 24 韓国は世界有数の暗号資産利用国であり、新政権の動向はグローバル市場にも影響を与える可能性があります。 25
技術アップデートとDeFi動向
技術面やDeFi(分散型金融)の分野でも、アルトコイン関連で注目すべきニュースがありました。
トークンアンロックと供給スケジュール
前述のSuiのように、プロジェクトのトークン経済(トケノミクス)に関わるイベントが価格に影響を及ぼしています。6月は、Aptos(APT)やLayerZero(ZRO)、Arbitrum(ARB)といった主要プロジェクトで、投資家や開発チーム向けのトークンロックアップ解除が予定されています。 26, 27 例えば、Aptosは約6,100万ドル相当、LayerZeroは約7,100万ドル相当のトークンを放出予定です。 28 大量のトークン供給は一時的な売り圧力となり得るため、市場参加者はこれらのスケジュールに注目しています。 29
ラップド・ビットコインのソラナ対応
ソラナ(Solana)ブロックチェーンでは、他のチェーンとの相互運用性を強化するニュースがありました。Wrapped Bitcoin(WBTC)が、ソラナ上でネイティブに利用可能になったのです。 30 WBTCは、ビットコインを価値の裏付けとするトークンで、これまでは主にイーサリアム上で流通していました。この対応により、ビットコインの流動性をソラナのDeFiエコシステムで直接活用しやすくなり、市場の拡大が期待されます。
セキュリティ事件(ハッキング)
6月冒頭には、残念ながらハッキング事件も報じられました。異なるブロックチェーンを繋ぐ「クロスチェーンブリッジ」であるNervos Networkの「Force Bridge」が攻撃を受け、約370万ドル相当の暗号資産が流出しました。 31 また、台湾の暗号資産取引所BitoProでも、約1,150万ドル相当が不正流出する被害が報告されました。これらの事件は、業界全体のセキュリティ課題を改めて浮き彫りにしました。 32, 33
企業・機関投資家による採用・提携
伝統的な金融機関や大手企業による暗号資産の活用も進んでいます。
フランクリン・テンプルトンのCardano参加
米資産運用大手のフランクリン・テンプルトン(運用資産総額1.6兆ドル)は、Cardano(ADA)ブロックチェーンのバリデータノード(取引の検証・承認を行うコンピューター)運営に参加し始めています。 35, 36 これにより、ネットワークの安全性に貢献する代わりに、ステーキング報酬(保有する暗号資産を預け入れることで得られる報酬)を受け取ります。 37, 38, 39 伝統的な金融の巨人が自らブロックチェーンのインフラ運営に参加するのは象徴的であり、市場に大きなインパクトを与えました。 40
Mastercardの決済トークン化戦略
決済大手のマスターカードも、欧州でデジタル決済インフラの強化に乗り出しています。同社は、オンライン決済のプロセスを全面的に「トークン化」する計画を発表しました。 41 トークン化とは、クレジットカード番号などの機密データを安全な代替データに置き換える技術です。将来的にはステーブルコインやCBDC(中央銀行デジタル通貨)との連携も視野に入れている可能性があり、暗号資産由来の技術が日常の支払いに溶け込む一歩となるかもしれません。
米サークル社の株式上場(IPO)
ステーブルコインUSDCの発行元として知られる米Circle社は、ニューヨーク証券取引所(NYSE)への新規株式公開(IPO)に踏み切りました。 42 主要なステーブルコイン企業としては史上初のIPOであり、暗号資産業界の成熟を示す例として注目されています。 43
ミームコイン文化・SNSでの話題
インターネット上のジョークから生まれたミームコインの分野でも、ユニークなニュースがありました。
トランプ大統領関連のプロジェクト
ドナルド・トランプ米大統領に関連するプロジェクトが引き続き話題です。トランプ氏の家族が支援するDeFiプロジェクト「World Liberty Financial(WLFI)」は、独自のステーブルコインUSD1のエアドロップ(無料配布)を6月4日に実施しました。 44 過去のトークン販売参加者を対象に、トランプ氏が第47代大統領となることを意識した47ドル相当のトークンが配布されました。 45, 46, 47 このエアドロップにより、トークンの時価総額は一時急増しました。 48 このように、政治と暗号資産文化が交差する現象が注目を集めています。 49
ミームコイン市場の熱気
ミームコイン市場全体の熱気は、依然として根強いものがあります。2025年に入り、多くのミーム系トークンは価格が低迷していました。 50 しかし、5月には「SPX 6900(SPX)」というミームコインが100%以上高騰し、一躍注目を集めました。 51, 52 ソラナ発のBONKなど、他の新興ミームコインも話題に上っています。 53 とはいえ、ミームコインは総じて価格変動が極めて高く、投機色が強いため、投資には慎重さが求められます。 54
参考文献:引用文献
- ビットコインとアルトコイン、2025年6月にETF憶測とマクロ要因の中で急騰 (KuCoin)
- SUI価格、4400万トークンのロック解除後21%下落 (Ainvest)
- SEC、暗号トークンが有価証券になる場合を明確化 (Altcoin Buzz)
- BTC、ETH、USDC、USDTがEUの暗号資産ルールから除外 (Altcoin Buzz)
- スイス、74カ国と暗号資産税務データを共有へ (Altcoin Buzz)
- 韓国、暗号資産に友好的なリーダーシップへ転換 (Altcoin Buzz)
- 6月に33億ドル相当のトークンがロック解除へ (Cointelegraph)
- ジョイスの5月5日 | アルファ・ブリーフ #4/6… (X)
- 2件の暗号資産ハッキングで6月が始まり、1500万ドルの損失 (BeInCrypto)
- フランクリン・テンプルトン、Cardanoノードを運営 (Altcoin Buzz)
- #CircleIPO (X)
- Techmeme (Techmeme)
- トランプのWLFI、数千人に47ドルをエアドロップ (CoinSpeaker)
- トランプ支持のWorld Liberty Financialが大規模なUSD1エアドロップを開始 (Unchained Crypto)
- トランプ氏のミームコインイベントでの大統領紋章使用が法的問題に (Cointelegraph)
- 2025年6月に注目すべきミームコイン5選:SPX6900、FARTCOINがリード (CCN.com)
- 2025年6月に購入・保有すべきトップミームコイン (The Cryptonomist)
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