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北米地域 主要ニュース【2025年6月14日】

北米・中南米ニュース解説(2025年6月):G7、貿易摩擦、移民問題から環境・人道危機まで

2025年6月中旬、北米および中南米地域は、国際政治の駆け引きから深刻な人道危機、環境問題まで、多様なニュースに揺れました。カナダで開催されたG7サミットでの結束が試される一方、米国の強硬な通商・移民政策が周辺国との間に緊張を生んでいます。最新の主要ニュースを分かりやすく解説します。

1. カナダでG7サミットが開幕、対ロシアで結束を維持できるかが課題

6月16日、カナダのアルバータ州で主要7カ国(G7)首脳会議が開幕しました。主要な議題は、ロシアによるウクライナ侵攻への対応と、対ロシア制裁における欧米の連携です。 1

会議にはウクライナのゼレンスキー大統領も招待されましたが、対ロシア支援において新たな大きな進展は期待されていません。¹ トランプ米大統領の復帰により、G7内の関係には緊張が走っています。各国は結束を乱さないよう慎重な協調姿勢を保っており、特に欧州側は、米国をウクライナ和平交渉の枠組みに留めておくことの重要性を強調しています。¹

2. G7へのインド首相招待に、カナダのシク教徒が猛反発

カナダのカーニー首相は、今回のG7サミットにインドのモディ首相をゲストとして招待しました。 2 しかし、この決定に対し、カナダ国内のシク教徒コミュニティから猛烈な反発が起きています。

昨年、カナダ在住のシク教指導者が殺害された事件を巡り、当時のトルドー首相がインド政府の関与を示唆し、両国関係は悪化しました。² 今回の招待は、警察から命の危険を警告されている指導者もいる中でのもので、「侮辱だ」との声が上がっています。サミット初日の6月15日には、首都オタワで抗議デモも行われました。²

3. 米国の高関税に対抗、カナダとメキシコが反発強める

トランプ米大統領がメキシコとカナダに対して一方的な高関税を発動したことで、北米の貿易戦争が激化しています。米国がメキシコからの全輸入品に25%の関税を課すと決定したことに対し、メキシコのシェインバウム大統領は報復関税を命じました。 3

メキシコ側は、豚肉やチーズなどへの報復関税を準備しているとみられます。³ また、米国が関税の理由に挙げた「麻薬カルテルと政府の癒着」という主張を「中傷だ」と強く否定しています。³ カナダのカーニー首相も「不当な措置と戦う」と表明し、メキシコと協調して北米経済を守る方針です。 4

4. 米国、メキシコに麻薬カルテル関連の汚職摘発で圧力

トランプ政権は、メキシコに対し、国内の麻薬カルテルと繋がりのある政治家の捜査、訴追、そして米国への身柄引き渡しを強く求めています。 5

米側は、メキシコが汚職政治家を摘発しなければ追加関税を課すと示唆し、圧力をかけたと報じられています。⁵ これは「麻薬対策」を「貿易問題」と連動させた揺さぶりと言えます。メキシコ政府は米国の内政干渉ともいえる要求と、国内の麻薬問題という板挟みの中で、難しい対応を迫られています。 6

5. LAでの大規模な移民摘発、抗議デモがサッカー大会に波及

米国移民当局による大規模な摘発作戦が各地で行われ、ロサンゼルスでは100人以上が拘束されました。 7 この強硬策に対し、全米で抗議デモが拡大。ロサンゼルス中心部では高速道路が封鎖され、車両が燃やされるなどの騒乱に発展しました。⁷

この混乱は、北中米カリブ海最大のサッカー大会「ゴールドカップ」にも影響を及ぼしています。6月14日にロサンゼルスで予定されていた開幕戦の安全が懸念される事態となりました。 8 メキシコのシェインバウム大統領は、試合中の強制摘発を行わないよう米当局に異例の要請を行っています。⁷

6. カナダの山火事が非常事態に、G7会場にも煙の影響懸念

カナダ各地で山火事が多発し、今シーズンの焼失面積はすでに過去数十年で2番目の規模に達しています。 9

全国で発生中の山火事のうち、半数以上が制御不能な状態です。⁹ 特に西部のアルバータ州などでは非常事態が続き、数万人が避難を余儀なくされ、死者も確認されています。⁹ この大規模な山火事による大気汚染も深刻で、G7サミットの開催地近郊でも大気質の悪化が警告されており、会議への影響が懸念されています。⁹

7. ハイチで暴力が激化、避難民は過去最悪の130万人に

カリブ海の島国ハイチでは、武装ギャングによる暴力が急増し、国内避難民の数が過去最悪の130万人に達しました。 10

首都ポルトープランスでは武装勢力が市域の85%を掌握し、誘拐や略奪が横行しています。ケニアが主導する多国籍治安部隊が展開中ですが、効果は限定的です。ブラジルのルラ大統領は、国連による財政支援の拡充か、正式な国連平和維持活動(PKO)への移行が必要だと訴えています。 11

8. ニカラグア初の女性大統領、ビオレータ・チャモロ氏が死去

ニカラグアの民主化の象徴とされた、ビオレータ・バリオス・デ・チャモロ元大統領が6月14日に95歳で亡くなりました。 12

チャモロ氏は1990年、長年の内戦終結後の選挙で勝利し、中米初の女性大統領に就任しました。¹² その治世は、強権体制から民主主義への転換期を象徴するものでした。近年はオルテガ政権による圧政が続く中、家族とともに亡命先のコスタリカで過ごしていました。遺体は「ニカラグアが再び自由になる日まで」仮埋葬されるといいます。¹²

9. 米国、ジャマイカへの渡航警戒レベルを引き下げ

米国務省は、犯罪の多発を理由に厳格なレベル3(渡航中止勧告に次ぐ)としていたジャマイカへの渡航警戒レベルを、レベル2の「渡航注意」に緩和しました。 13

これは、両国間の治安協力に関する対話が進展したことを受けたものです。観光業が経済の柱であるジャマイカにとって、この決定は朗報です。ホルネス首相は「我が国の前進が認められた」と歓迎の意を表明しています。¹³

10. 中南米開発銀行、海洋保護への投資を25億ドルに倍増

中南米・カリブ海地域の開発銀行CAFは、海洋環境保護と持続可能な海洋経済支援のための投資額を、従来の計画から倍増させ、25億ドルにすると発表しました。 14

この資金は、低炭素型の海上輸送の促進や、損傷した海洋生態系の回復、持続可能な観光の支援などに充てられます。¹⁴ CAFは、慢性的に資金が不足している海洋保全の分野で、主導的な役割を果たしていく構えです。

11. トランプ政権、在米移民の「一時保護資格(TPS)」撤廃へ動く

トランプ政権は、中米やハイチからの移民に与えられてきた「一時保護資格(TPS)」の撤廃に動いています。TPSとは、母国での内戦や自然災害などを理由に帰国が困難な外国人に、米国内での一時的な滞在と就労を許可する人道的な制度です。 15

トランプ氏は第一次政権時代にも約40万人を対象としたTPSの打ち切りを試みましたが、当時は裁判所によって阻止されました。¹⁵ しかし、再登板後の今年2月には約52万人のハイチ人に対する在留資格の延長措置を撤回。¹⁵ さらに約35万人のベネズエラ人に対するTPSも終了させる方針で、米国内で移民政策を巡る論争が再び激化しています。¹⁵


参考文献:引用文献

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