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トランプ大統領、G7サミットを異例の早期離脱:時系列をチェック【6月17日】

トランプ大統領、G7サミットを異例の早期離脱:中東危機への対応を理由に

2025年6月16日、カナダのカナナスキスで開催された主要7カ国(G7)首脳会議は、ドナルド・トランプ米大統領が中東情勢への対応を理由にサミットを途中離脱するという、極めて異例の事態に見舞われました。この突然の決定は、G7の結束に揺さぶりをかけるとともに、緊迫する中東情勢における米国の役割を巡り、国際社会に大きな波紋を広げています。

ニュースの時系列:G7サミットでの出来事

6月13日~15日:中東情勢の急激な悪化

G7サミット開幕に先立つ6月13日、中東ではイスラエルとイランの間で大規模な軍事衝突が勃発しました。イスラエル軍はイランの核関連施設への奇襲攻撃を開始し、これに対しイラン側も弾道ミサイルによる報復攻撃を実施。戦闘は数日間で激化の一途をたどり、双方に多数の死傷者が出る事態となりました。 1

この事態を受け、日本の石破茂首相は13日の時点でイランに「最大限の自制」を求めるなど、各国が懸念を表明。 2 国際原子力機関(IAEA)はイランの主要な核濃縮施設が「深刻な損傷」を受けたと発表し、世界の金融市場は原油価格の急騰と株価の下落で敏感に反応しました。 3 4

6月16日午前:G7サミット開幕と米国の独自路線

6月16日、G7サミットがカナダで開幕しました。日本の石破首相とトランプ米大統領は開幕直後に会談し、米国による高関税措置について協議しましたが、懸案の解決には至らず、協議継続で一致しました。 5

トランプ大統領は、この会談を「平行線だが建設的だった」と評する一方で、ロシアのG7復帰に前向きな姿勢を示すなど、独自の外交路線を鮮明にしました。 6 7 この発言は、ウクライナ支援や対ロシア制裁を巡るG7内の足並みの乱れを懸念させました。

6月16日午後~夕方:共同声明を巡る対立と早期離脱の発表

午後の討議では、中東情勢が主要議題となりました。G7首脳らは、戦闘の即時沈静化を呼びかける共同声明の文案調整に入りました。報道によると、案文には「イランに核兵器を保有させない」「イスラエルの自衛権」「交渉による問題解決」といった内容が盛り込まれていたとされます。

しかし、トランプ大統領はこの共同声明案への署名を拒否。「イスラエルとイラン双方に自制を求める文言には同意しない」という米国の強硬な姿勢が、他のG7各国との間に深刻な温度差を生じさせ、共同声明の発表そのものが危ぶまれる事態となりました。

そして16日夕刻、ホワイトハウスは「トランプ大統領は中東で起きている事態への対応のため、今夜の首脳夕食会後にG7サミットを途中離脱してワシントンに戻る」とSNSで電撃的に発表しました。 8 現職の米大統領が主要な国際サミットを会期途中で離脱するのは極めて異例のことです。

6月16日夜~17日:トランプ大統領の帰国とG7の閉幕

トランプ大統領は予定通り初日の公式日程を終えた後、夜半にカナダを発ちました。フランスのマクロン大統領は、トランプ大統領の帰国を「米国が中東停戦に向けた提案を行うためであり、前向きな動きだ」と評価するコメントを出しました。 9

帰国直後、トランプ大統領は国家安全保障会議(NSC)を招集。 10 同時に、米軍は空母打撃群を中東方面へ急派するなど、軍事的な備えを強化しました。トランプ氏は自身のSNSで「イランに核兵器を持たせるわけにはいかない!テヘランにいる全員、直ちに退避せよ!」と投稿し、強硬な姿勢を崩さない考えを示しました。

一方、G7サミットは17日、米国大統領不在という異例の状況で続けられました。しかし、首脳間の緊密な調整が困難となったことから、議長国カナダは最終的な首脳共同声明の採択を断念。AI規制やサプライチェーン強靭化など、限定的なテーマでの合意文書を発表するに留まりました。

影響分析

外交への影響

トランプ大統領の途中離脱は、G7の結束と調整能力の低下を露呈しました。特に、中東情勢を巡る共同声明の取りまとめに失敗したことは、国際的な課題に対するG7の影響力に疑問符を投げかける結果となりました。

一方で、この動きは米国が中東和平の主導権を握ろうとする戦略の表れでもあります。米国がイスラエルとイランの双方に独自の停戦案を提示しているとされ、G7の枠組みとは別に、米国主導で事態の打開を図る思惑がうかがえます。しかし、その手法は同盟国との亀裂を生むリスクもはらんでおり、特にイスラエル寄りの姿勢は、イラン側の不信感を増幅させる可能性があります。

また、トランプ大統領がロシアのG7復帰に言及したことは、ウクライナを支援する欧州各国との間にも溝を深め、今後の対ロシア政策に不協和音を生じさせる火種となっています。

マーケットへの影響

中東危機と米大統領の突然の帰国は、金融市場にも大きな動揺をもたらしました。

原油価格の急騰
紛争拡大による供給不安から、原油価格は6月13日の攻撃開始直後から急騰し、一時7%以上の上昇を記録しました。 11
株式市場の下落
世界経済への下押し圧力が懸念され、ニューヨーク市場のダウ平均株価は大幅に下落しました。 12
安全資産への資金逃避
投資家のリスク回避姿勢が強まり、安全資産とされる金の価格は過去最高値圏まで急伸しました。 13 為替市場でも、一時的にドルや円が買われる動きが見られました。

市場は引き続き中東情勢と米国の動向に敏感に反応しており、イラン側が停戦に前向きな姿勢を見せると原油価格が反落するなど、不安定な状況が続いています。 14

G7内の反応と首脳コメント

G7各国首脳は、トランプ大統領の異例の行動に対し、公には慎重な反応を示しました。議長国カナダのカーニー首相は「(帰国の)理由を完全に理解する」と述べ、他の首脳も表向きは米国の事情に理解を示しました。しかし、舞台裏では戸惑いの声も聞かれ、G7の結束が乱れたことへの失望感が広がっています。

フランスのマクロン大統領のように、米国の動きを「停戦に向けた前向きな動き」と積極的に評価する声もありましたが、多くのメディアは「G7結束に暗雲」「多国間協調の機能不全」と報じ、トランプ外交への警戒感を強めています。

今回の一連の出来事は、「トランプ流」の予測不能な外交スタイルが、再び国際政治の中心に躍り出たことを象徴しています。多国間協調よりも二国間のディールを優先する米国の姿勢に、世界は今後も難しい対応を迫られることになりそうです。


参考文献:引用文献

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