【2025年6月19-20日】欧州の主要ニュース:フィンランドが地雷禁止条約離脱、ブルガリアはユーロ導入へ
2025年6月19日から20日にかけて、欧州では安全保障、経済、社会の各分野で重要な動きが相次ぎました。ロシアの脅威を背景にフィンランドが対人地雷禁止条約からの離脱を決定する一方、ブルガリアはユーロ導入に向けて大きく前進しました。この記事では、欧州の最新ニュースを分かりやすく解説します。
フィンランド、対人地雷禁止条約からの離脱を決定
(6月19日)
フィンランド議会は6月19日、対人地雷の使用を禁じるオタワ条約からの離脱を賛成多数で可決しました。 1 これは、隣国ロシアからの軍事的脅威に備えるための措置です。ロシアと国境を接するバルト三国やポーランドも同様の動きを見せており、欧州の安全保障環境の変化が、人道的な軍縮への取り組みに影を落としています。
EU9か国、イスラエル入植地との取引停止を提案
(6月19日)
ベルギーやアイルランド、スペインなどEU加盟9か国の外相は、欧州委員会に対し、パレスチナ自治区内のイスラエル入植地で生産された産品との貿易を停止するよう求める共同書簡を提出しました。 3
この動きは、国際司法裁判所(ICJ)が入植地を違法とする勧告を出したことを受けたものです。EUの主要な貿易相手であるイスラエルに対し、このような提案が公になるのは異例であり、中東情勢を巡る欧州の姿勢に注目が集まっています。
ブルガリア、2026年のユーロ導入へ前進
(6月19日)
ユーロ圏の財務相会合(ユーログループ)は6月19日、ブルガリアが必要な経済基準を満たしたとして、2026年1月1日付でユーロ圏の21番目の加盟国となるよう勧告することを決定しました。 7
この勧告は、EUの首脳会議などで正式に承認される見通しです。ブルガリアは2007年のEU加盟以来、ユーロ導入を目指してきました。ユーロ圏の拡大は、欧州統合の深化を象徴する出来事として評価されています。
英国で「尊厳死」合法化法案が歴史的審議
(6月20日)
英国議会の下院は6月20日、終末期患者が医師の介助のもとで自ら死を選択できる「尊厳死」を合法化する法案の採決を予定していました。 10 この法案は超党派の支持を得ており、可決されれば英国史上初めて尊厳死が合法化されることになります。高齢化社会における終末期医療のあり方に一石を投じるものとして、その行方が注目されています。
ハンガリー警察がプライド・パレードを禁止、ブダペスト市長は強行の構え
(6月19日)
ハンガリーの警察当局は6月19日、首都ブダペストで予定されていたプライド・パレード(LGBTQ+の権利を訴える行進)を許可しないと発表しました。これは、未成年者への同性愛に関する情報の提供を禁じる法律に基づくものです。
しかし、野党系のカラーチョニ・ブダペスト市長は、この禁止決定を無効とみなし、市が主催する行事としてパレードを予定通り開催すると表明しました。 11 オルバン政権による反LGBTQ+的な法制化に対し、EUからも懸念が示されており、ハンガリーの人権状況と欧州の価値観との対立が改めて浮き彫りになっています。
イタリア財務相「EU財政規律は愚か」と発言、防衛費巡り改革要求
(6月19日)
ユーロ圏財務相会合で、イタリアのジョルジェッティ経済相が、EUの財政規律について「現在の規則は愚かで無意味だ」と強く批判しました。 14
NATO(北大西洋条約機構)が各国に軍事支出の拡大を求める中、高い公的債務を抱えるイタリアは、防衛費を増やすために現行の財政規律を見直すべきだと主張しています。 15 この発言は、安全保障の強化と財政健全化という二つの課題に直面する欧州の現状を物語っています。
デンマーク、次期EU議長国としてウクライナの加盟交渉を推進へ
(6月19日)
デンマーク政府は、7月1日から始まるEU理事会議長国としての任期中に、ウクライナのEU加盟交渉を前進させる意向を表明しました。 17 デンマークのヨーロッパ担当相は、交渉の進展を妨げているハンガリーに最大限の圧力をかけると述べています。ロシアの侵攻に揺れるウクライナへの支援と、気候変動対策が、デンマークの議長国期間における二大テーマとなります。
フランス政府、欧州版スターリンク計画に巨額出資
(6月19日)
フランスの衛星通信大手ユーテルサット社は6月19日、大規模な増資計画を発表しました。フランス政府がそのうち約半分を引き受け、同社の筆頭株主となる見通しです。 20
ユーテルサット社は、イーロン・マスク氏のスターリンクに対抗する欧州の戦略的な衛星通信インフラと位置付けられています。フランス政府は、デジタル分野での主権確保と宇宙産業の強化を狙い、この計画を強力に支援しています。
イタリアで違法盗聴スキャンダル、政界ゴシップサイトも標的に
(6月19日)
イタリアの検察当局は、イスラエル製のスパイウェア「パラゴン」を用いた違法な携帯電話のハッキング疑惑を捜査しています。 23 政治ゴシップサイトの創設者を含むジャーナリストや活動家など、少なくとも7人の電話が標的になっていたとされています。メローニ首相は不正への関与を否定していますが、民主主義国家における報道の自由を巡る議論に発展しています。
ギリシャ、2023年の列車事故で元大臣の責任を調査へ
(6月19日)
ギリシャ議会は、57人の犠牲者を出した2023年2月の鉄道衝突事故について、当時の運輸大臣の責任を調査する委員会を設置することを決定しました。 27 この動きは、事故後の政府対応への国民の不満や政治不信の表れであり、真相解明と責任追及を求める世論に応えるものとなっています。
グリーンランド、EU支援の戦略的鉱物採掘プロジェクトを始動
(6月19日)
デンマークの自治領であるグリーンランド当局は、島東部でのモリブデン鉱山の開発プロジェクトに30年間の採掘許可を与えたと発表しました。 31 モリブデンは、宇宙航空や防衛産業に不可欠な戦略的金属です。このプロジェクトはEUの支援を受けており、中国への資源依存からの脱却を目指す、欧州の経済安全保障戦略の一環と位置付けられています。
参考文献:引用文献
- フィンランド議会、ロシアの脅威を理由に対人地雷禁止条約からの離脱を可決 (Reuters)
- EU9か国、イスラエル入植地との貿易終了に向けた協議を呼びかけ (Reuters)
- ユーロ圏財務相、ブルガリアの2026年ユーロ導入を勧告 (Reuters)
- ヨーロッパニュース | 最新の見出しと記事 (Reuters)
- ハンガリーでは、ブダペスト市長が警察による禁止にもかかわらずプライドマーチを維持 (Le Monde)
- ジョルジェッティ:「防衛費については、EUの愚かな規則を更新せよ」 (Ansa.it)
- イタリア、防衛費増額を迫られ、「愚かな」EU規則を非難 (Reuters)
- デンマーク、EU議長国期間中にウクライナのEU加盟を推進へ (Reuters)
- スターリンクの欧州の競合であるユーテルサット、フランス政府を筆頭株主とする増資を準備 (Le Monde)
- イタリアの電話ハッキング疑惑に政治ゴシップサイトが関与、と関係者が語る (Reuters)
- ギリシャ議会、鉄道事故を巡り元大臣の調査を票決 (POLITICO)
- グリーンランド、EU支援の重要金属プロジェクトに採掘許可を与える (Reuters)
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