ポール・ドイル (Paul Doyle)による2025年リバプールFC優勝パレード車両突入事件

リバプールFC優勝パレードに車両突入、多数負傷

2025年5月26日夕方、イングランド・リバプール市中心部で開催されていたサッカー・プレミアリーグの優勝祝賀パレードで、ポール・ドイル (Paul Doyle)という男性が運転していた乗用車が沿道の群衆に突入するという衝撃的な事件が発生しました。この事件は、祝賀ムードに包まれていた街を一瞬にして混乱に陥れ、多数の負傷者を出しました。本記事では、この事件の事実関係、背景、被害状況、捜査の進展、そして社会に与えた影響について、最新情報を基に紹介します。

事件の発生状況：祝賀ムードから一転
被害状況と捜査の進展
容疑者の身元と起訴内容
社会的影響と反応
総括

事件の発生状況：祝賀ムードから一転

2025年5月26日、リバプールFCのプレミアリーグ優勝を祝う公式パレードがリバプール市内で開催されました。当日はバンクホリデー（銀行休業日）でもあり、市内には数十万人のファンが集結し、熱気に包まれていました。 ⁴ しかし、パレード終了間際の午後6時過ぎ、閉鎖されていたはずのウォーターストリートに乗用車（フォード・ギャラクシー）が突如進入し、沿道の群衆に高速で突っ込みました。 ⁵

事件発生直後からSNS上には現場の生々しい動画が投稿され、被害者がはね飛ばされる様子や、怒ったファンが車に詰め寄る光景などが確認できます。現場にいた警察官が迅速に対応し、運転手の身柄を確保するとともに、救助活動や現場封鎖にあたりました。 ⁹ 地元警察（マージーサイド警察）は、逮捕した男（53歳）について、「本件はテロ関連の事件ではない」との見解を直ちに表明しています。 ¹⁰

車両侵入の経緯については、パレード終盤に現場近くで救急要請があり、救急車を通すために一時的に道路封鎖が解除された際、容疑者の車がその救急車の直後に続いて区域内に侵入したと見られています。警察によれば、周到に計画された犯行というよりは偶発的・機会的なものの可能性が高いとされています。 ¹⁷

被害状況と捜査の進展

多数の負傷者が発生

この事件による負傷者は当初約50人と報じられましたが、その後の捜査で9歳から78歳までの合計79名に上ることが明らかになりました。 ¹⁹ 幸い死亡者は出ていませんが、子供や高齢者も含まれており、市民に与えた衝撃は甚大です。重篤とされた成人1名と子供1名も、その後容体は安定していると報告されています。

警察による徹底捜査

マージーサイド警察は事件発生後直ちに現場へ急行し、初動対応にあたりました。 ²¹ 100人規模とも報じられる捜査チームが投入され、監視カメラ映像や目撃者の証言などを集中的に分析しています。 ³⁰ 警察は市民に対し、憶測を控え、情報提供を呼びかけています。被害者一人ひとりには担当捜査員や家族支援要員が付き、ケアを行う体制で捜査が進められています。

容疑者の身元と起訴内容

逮捕された運転手

逮捕された運転手は、リバプール市内在住のポール・ドイル（Paul Doyle、53歳）であることが警察発表で明らかにされています。 ³⁹ 地元で事業を営む実業家であり、元イギリス海兵隊員、3人の子の父親でもある人物です。 ⁴⁰

適用された罪名

5月29日、検察当局（クラウン・プロセキューション・サービス [CPS]）はドイル容疑者を正式に起訴しました。適用された罪名は、「重大な傷害を故意に与えた罪（grievous bodily harm, GBH）」、「傷害未遂」、「凶器危険運転」など合計7件です。これには11歳の子供を含む被害者2名に対するGBH罪2件、別の子供（9歳）を含む2名に対する傷害未遂罪2件などが含まれています。殺人未遂罪での起訴は見送られましたが、検察は「全容解明に伴い罪状の再検討も続ける」としています。薬物関連の容疑は起訴状に含まれていません。

ドイル容疑者は5月30日にリバプール治安判事裁判所に出廷しましたが、罪状認否は行われず、事件はクラウン法廷（高等法院刑事部）に移送されました。 ⁵⁰ 正式な罪状認否は2025年8月14日に予定されています。英国では故意の重度傷害罪は法定刑の上限が終身刑に及ぶ重罪であり、厳しい量刑判断が予想されます。

社会的影響と反応

政治家やクラブからの声明

この事件は英国社会に大きな衝撃を与えました。キーア・スターマー首相（当時）は「リバプールで起きた光景は恐ろしく痛ましい」とSNSで表明し、緊急サービス関係者を称賛しました。 ⁵³ リバプールFCも公式声明で被害者へのお見舞いと、警察当局への全面的な支援を表明しました。 ⁵⁶ ビリー・ホーガンCEOは「喜びに満ちた週末が一転して想像を絶する惨事となった」と述べ、関係者への感謝とファンへの捜査協力を呼びかけました。 ⁵⁷

市民の反応と安全管理への課題

地元メディアには目撃者の証言や救出活動の詳細が連日掲載され、市民の間ではショックと怒り、そして「二度とあってはならない」という声が広がっています。事件現場には花束やチームのスカーフが手向けられ、被害者への連帯メッセージが寄せられました。

警察は「孤立した単独犯行であり、市民へのさらなる脅威は現時点で確認されていない」と強調しています。 ⁶⁰ しかし、大規模イベントの安全管理の観点からは課題も指摘されています。完全封鎖区画に車両が侵入した事実を受け、緊急車両の出入り時の二重チェック体制やバリケード強化などが検討される見込みです。本件はテロではないと判断されていますが、市民の不安払拭のため、警察は市中心部のパトロールを強化するとしています。

総括

2025年5月のリバプールにおける車両突入事件は、祝祭の場が一瞬にして惨事へと変わった痛ましい出来事でした。報道と公式発表から事実関係は確かであり、現在は容疑者の起訴・裁判手続きが進んでいます。幸いテロではなく、さらなる直接的な危険はないとされていますが、多数の市民が負傷した社会的インパクトは大きく、今後の司法審理での全貌解明と適正な処罰が求められています。リバプールのコミュニティは、この悲劇から立ち直ろうとしています。