公益通報の対象は内部通報限定?消費者庁の公式見解

斎藤兵庫県知事「公益通報の対象は内部通報限定?」消費者庁の公式見解との違いを検証

公益通報の対象は内部通報限定?

最近、兵庫県の斎藤知事が公益通報者を保護するための通報制度の整備について、「制度整備の義務は内部通報に限定されるという考え方もある」と発言しました。これに対し、消費者庁は「国の公式見解とは異なる」との見解を示し、話題となっています。この問題について詳しく検証していきます。

公益通報者保護法とは何か?

公益通報者保護法は、企業や行政機関において法令違反や消費者の安全を脅かす違法行為があった際に、それを通報した人を保護するための法律です。2006年に施行され、2022年6月には大きく改正されました。

2022年改正の主なポイント

  • 従業員300人以上の大企業や一定規模以上の地方公共団体に対して、通報窓口や対応体制の整備が義務化された
  • 対象範囲が従業員だけでなく役員や退職者(退職後1年以内)にまで拡大された
  • 通報対応の明確なガイドラインが消費者庁により公表された(消費者庁の公益通報者保護制度のページ

兵庫県斎藤知事の発言とその背景

今回話題となった斎藤知事の発言は、「整備が義務付けられる対象は内部通報に限定されるという考え方もある」という趣旨でした。つまり、「法律が義務として明記しているのは企業や行政内部の労働者等(従業員や役員)からの通報に対応する仕組みの整備であって、外部からの通報に対する対応窓口の整備義務は必ずしも明確に定められていない」という考えを示したものです。

消費者庁の公式見解とは?

一方、消費者庁は明確に「それは国の公式見解とは異なる」と指摘しています。その理由として以下を挙げています:

  • 公益通報者保護法の趣旨は、内部通報のみならず外部からの公益通報も広く受け付け、違法行為を早期発見・是正することにある
  • 内部通報対応制度の義務化は「内部からの通報体制整備」を求めているが、それは外部からの通報を受けないことを認める趣旨ではない
  • 外部通報も積極的に受け付ける仕組みを整えることが望ましいとの考え方を明示している

法令の条文と実際の運用とのズレは?

法律の条文だけを見ると、「労働者等の内部通報への対応体制整備」が義務付けられていることは確かです。しかし、実際の運用や消費者庁のガイドラインでは、外部からの公益通報も重要視されています。法の趣旨としても、外部からの通報を排除するような制度は好ましくないというのが公式な立場です。

なぜ外部通報を排除すべきでないのか?

企業や行政機関にとって、外部からの通報は以下の理由で重要です:

  • 外部からの情報提供により、不正や違法行為が早期に発見される可能性が高まる
  • 内部だけでは気づかない問題が浮かび上がり、リスクマネジメントに役立つ
  • 行政や企業の透明性・信頼性向上につながる

兵庫県を含む地方公共団体に求められる対応

地方公共団体は市民や県民からの通報を受け付け、適切に調査・対応することで、地域住民の安全・安心を確保し、行政への信頼を高める必要があります。法的な最低限の義務を満たすことはもちろんですが、それを超えて外部通報を受け入れる体制整備が強く望まれます。

まとめと今後のポイント

斎藤知事の発言自体は、法律の文面に限れば「完全な誤り」とはいえませんが、「内部通報に対応していれば外部通報は対応しなくてもよい」と受け取られると、法の趣旨に反するといえます。消費者庁が公式見解との違いを指摘したのは、その誤解を防ぐためです。

兵庫県が今後どのような対応体制を整えるのか、消費者庁の指摘を踏まえ、透明性を持って進めていくことが求められます。

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