2025年6月15日 中国主要ニュース:経済指標から南シナ海情勢、米中対立まで
2025年6月15日、中国では経済の現状を示す重要指標が発表される一方、台湾との関係や南シナ海問題、さらには米中間のハイテク分野をめぐる対立など、多岐にわたるニュースが報じられました。国内の技術開発や最高指導者の思想に関する動きも含め、最新の主要ニュースを分かりやすく解説します。
1. 5月の中国経済指標:工業生産は減速も、消費は予想を上回る
2025年5月の中国経済指標が発表され、まだら模様の結果となりました。工業生産は前年同月比で5.8%の伸びとなり、4月の6.1%から減速し、半年ぶりの低い伸び率に留まりました。 1
一方で、個人消費の動向を示す小売売上高は、前年同月比で6.4%増と4月の5.1%から加速しました。これは市場予想を上回り、2023年12月以来の高い伸びです。製造業の伸び悩みと消費の健闘という混在した結果は、長期化する米国との貿易摩擦の中で、中国経済の回復が依然として課題を抱えていることを示唆しています。
2. 海峡フォーラムが開幕、台湾から馬英九前総統も初出席
中国と台湾の民間交流イベントである「第17回海峡フォーラム」が、6月15日に中国福建省アモイ市で開幕しました。台湾の各界から7,000人以上が招かれ、台湾の馬英九(ばえいきゅう)前総統も初めて出席し、挨拶を行いました。 2
このフォーラムは、両岸(中国と台湾)で最大規模の民間交流プラットフォームとされています。 3 現在の政治的緊張にもかかわらず多くの台湾市民が参加したことは、「平和・発展・交流・協力」を望む民間の強い思いの表れであり、中国政府が進める両岸融和路線にも沿う動きです。
3. 中国軍が南シナ海で合同巡視、フィリピンをけん制
中国人民解放軍は6月14日、南シナ海で海空合同の巡視活動を実施したと翌15日に発表しました。 4 中国軍の報道官は、フィリピンが域外国と「共同巡航」を企て、地域の安全保障に新たなリスクを生じさせていると非難。自国の主権と海洋権益を断固として守ると強調しました。
南シナ海は年間3兆ドルを超える海上貿易が通過する重要な海路です。中国はこの海域のほぼ全域に主権を主張しており、フィリピンなど周辺国との間で緊張が高まっています。今回の巡視活動は、米国とフィリピンの協力強化に対抗する措置とみられ、偶発的な衝突への懸念も指摘されています。
4. 台湾、ファーウェイとSMICを輸出規制リストに追加
台湾当局が、中国の通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)と、半導体受託生産大手・中芯国際集成電路製造(SMIC)を、輸出規制の対象リストに新たに追加したことが分かりました。 5
台湾経済部の国際貿易局が公開した、輸出規制の対象となる企業や組織をまとめた「エンティティリスト」に、両社およびその関連会社が記載されました。これにより、台湾企業がこれらの中国企業へ関連製品を輸出する際には、事前の許可が必要となります。この措置は、米国の対中制裁強化に歩調を合わせたものとみられ、中国の先端半導体開発にとって新たな障壁となる可能性があります。
5. 米中貿易協議、軍事用途のレアアース輸出で溝
米中両政府はロンドンでハイレベルの通商協議を行いましたが、軍事関連のレアアース(希土類元素)の輸出問題が未解決のまま残っていることが明らかになりました。 6
関係者によると、中国側は、米国の戦闘機やミサイルに不可欠な特殊なレアアース磁石の対米輸出許可を約束していません。一方で、米国は中国向けの先端AI半導体の輸出規制を継続しており、ハイテク分野における安全保障上の溝は埋まっていません。この問題は、包括的な米中合意の障害となり得るため、今後の協議の行方が注目されています。
6. 中国、極超音速機向けの超高耐熱材料の開発に成功
中国の研究チームが、極超音速(ハイパーソニック、音速の5倍以上)飛行における耐熱素材の限界を打ち破る新材料を開発したと報じられました。 7
この新材料は、摂氏3600度という極限的な高温に耐えることができるとされています。従来の極超音速機の表面材料の耐熱限界は約3000度とされており、この開発は大きなブレークスルーと評価されています。航空宇宙やエネルギー産業など、極限環境下での応用が期待されます。
7. 習主席、経済の「中長期計画」の重要性を強調
中国共産党中央委員会の理論誌である『求是』に、習近平国家主席の経済計画に関する重要論文が掲載されると報じられました。 8
この論文で習主席は、5カ年計画のような中長期計画の策定と実施が、中国の発展を支えてきた重要な経験であり、社会主義の政治的優位性であると強調しています。現在中国が直面する経済減速や構造改革に対し、中長期的な視点で政策の一貫性と安定性を維持する姿勢を示したものとみられます。
8. 中国、イスラエルの対イラン空爆を非難し即時停止を要求
中東でイスラエルとイランの軍事衝突が激化する中、中国は国連の場でイスラエルの攻撃を強く非難しました。国連の傅聡(ふそう)中国常駐代表は6月14日の安全保障理事会で、「イスラエルの行動はイランの主権を侵害するものであり、極めて危険な軍事行動だ。直ちに全ての攻撃を停止すべきだ」と述べました。 9
中国政府は、この事態がイラン核問題の外交的解決に悪影響を及ぼすことにも強い懸念を表明しています。中東での大規模な紛争はエネルギー市場や国際安全保障に深刻な影響を及ぼすため、中国としても国連の場で停戦を強く訴えた形です。
参考文献:引用文献
- 中国の工場生産は減速、小売売上高は予想外に好調 (ロイター)
- 初めて海峡フォーラムに参加、馬英九氏は笑顔 (テンセントニュース)
- 海峡フォーラムに出席し王滬寧と会見、馬英九は両岸の和と合を提唱 (中評社)
- 中国軍、南シナ海で巡視活動を実施しフィリピンに警告 (ロイター)
- ブルームバーグ:台湾がファーウェイとSMICに技術輸出規制を実施 (香港新聞社)
- 独占:米中貿易休戦、軍事用レアアース問題は未解決のまま、関係者談 (ロイター)
- 中国の研究者、極超音速飛行の熱限界を破る材料を開発 (Yeni Şafak)
- 『求是』誌が習近平総書記の重要論文「中長期計画を用いて経済社会発展を指導することは我々の党の治国理政の重要な方法である」を掲載 (陝西省市場監督管理局)
- 中国の国連特使、イスラエルのイラン攻撃を非難 – 国営メディア (ロイター)
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