Gaza Humanitarian Foundation(GHF)についての詳細レポート
1. GHFの設立経緯
Gaza Humanitarian Foundation(以下GHF)は、2025年2月にアメリカ合衆国のデラウェア州で法人登録されました。当初はスイスのジュネーブにも拠点を置きましたが、財務の透明性問題やスイス法令違反の疑いから短期間で閉鎖され、アメリカに拠点が一本化されました。
創設には元アメリカ海兵隊員のジェイク・ウッド(Jake Wood)氏、元CIA職員のフィリップ・ライリー(Philip Riley)氏など、安全保障や軍事分野に経験を持つ人々が関与しており、設立当初から政治色・軍事色が強いと指摘されていました。
2. 現在の活動と役割
GHFは主にガザ地区において人道支援物資の配給を行っています。ガザ南部のラファなど4か所に設置された「セキュア配給センター」では、IDチェックや生体認証を用いた配給が行われており、初日だけで約8,000箱(約44,000食分)が配布されました。現在では1日最大260万食を供給していると報告されています。
配給拠点の安全管理は、イスラエル軍(IDF)と民間軍事会社Safe Reach Solutionsが担当しており、GHFの運営は実質的にイスラエルとアメリカの影響下に置かれています。
3. GHFを巡る問題点
3-1. 非中立性と政治的影響
GHFはイスラエルおよび米国政府からの直接的支援を受けており、運営幹部に米軍経験者やCIA出身者が多いことから、中立性を保てないとの批判が相次いでいます。国連(UN)や赤十字などの伝統的な人道機関はGHFと距離を置き、協力を拒否しています。
3-2. 人道的危機と犠牲者の増加
GHFの配給所周辺では群衆への発砲事件が頻繁に起こっており、これまでに500人以上が死亡、3,000人以上が負傷したと報告されています。国境なき医師団(MSF)や国連はこの事態を深刻な「人道犯罪」と批判し、援助の軍事化を非難しています。
3-3. 法的リスクと透明性欠如
GHFは財務情報や運営経費を公表しておらず、国際的な透明性基準を満たしていないとして問題視されています。これに関連して国際人権団体はGHFを戦争犯罪や人道犯罪の共犯として法的責任を追及する可能性を示唆しています。
4. 最新の動向・主要関連ニュース
2025年6月26日には、米国政府がGHFへの3,000万ドルの資金援助を承認し、今後年間最大5億ドル規模の支援拡大も検討されています。しかし、ユニセフや180を超える人権・援助団体が連名でGHFの運営停止を求める声明を発表しました。
また、ガザ北部への援助が完全停止されたことに伴い、南北の人道格差がさらに広がり、配給所での民間人犠牲者が増加し続ける深刻な状況が続いています。それぞれ細かくみてみましょう。
1. 米国政府による3,000万ドル支援決定
2025年6月24日、米国国務省はGHFに対し初の政府資金3,000万ドルを承認しました。トミー・ピゴット国務副報道官は「GHFの記録は称賛に値し、支援に値する」と述べています。また、この支援は通常の監査要件を免除した上で迅速に決定されました。[1]
2. 配給実績と被害状況の拡大
GHFは運用開始以来、46百万食以上を配布したと発表していますが、一方で配給所周辺では民間人549人が死亡、4,066人が負傷していると報告されています。[2]
3. 国連の「援助の武器化」声明
国連人権高等弁務官事務所は、GHFによる配給モデルが「食料支援の武器化」と非難し、410人以上の民間人が殺害されているとして、戦争犯罪の可能性を指摘しています。[3]
4. 国際NGO・人権団体からの法的警告
英ガーディアン紙などが報じたところによると、15以上のNGO・人権団体がGHFを戦争犯罪や大量殺戮、人道犯罪に関与する可能性があるとして、法的責任を追及する可能性を警告しています。[4]
5. GHF職員が攻撃されるケースも発生
2025年6月11日にはGHF職員を乗せたバスがハマス勢力に襲撃され、5名が死亡する事件が発生しています。このことから現地でのGHF活動には非常に高いリスクが伴っていることが示されています。[5]
総括と評価
GHFの活動は一定の配給成果をあげていますが、その方法が中立性や安全性を欠いていることから、国際社会や人権団体から強い批判が寄せられています。特に国連の指摘する「食料支援の武器化」は深刻な人道問題として扱われており、今後の運営方法や支援のあり方を見直す必要性が示唆されています。
GHFは深刻な人道危機にあるガザ地区への援助を目的としながらも、実際の活動には極めて重大な問題を抱えています。支援の名目で政治的・軍事的影響力を拡大しているとの批判が絶えず、人道的観点からも非常にリスクが高い状態です。
今後、国際社会は透明性と中立性を確保した上で、民間人の安全を第一に考えた真の人道支援の仕組みを再構築する必要があります。
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