中東

イスラエルのネタニヤフ首相はギリシャに逃亡した?真偽を検証

ネタニヤフ首相はギリシャに逃亡したのか?軍事衝突の裏で広まった情報の真偽を検証

2025年6月13日、イスラエルがイランを大規模空爆した直後、「ネタニヤフ首相がギリシャに逃亡した」という情報がSNSを中心に世界中を駆け巡りました。イスラエルとイランの軍事的緊張が極限まで高まる中、この情報は大きな混乱と憶測を呼びました。この記事では、イスラエル政府専用機の動きから、各国メディアの報道、SNSでの拡散経緯までを追い、この情報の真偽を検証します。

発端:イスラエル政府専用機がギリシャへ

今回の噂の発端となったのは、イスラエル政府の要人が使用する専用機「ウィング・オブ・シオン(Wing of Zion)」の動きでした。6月13日の朝、この専用機がイスラエルのベン・グリオン国際空港を離陸し、ギリシャのアテネに向かったことがフライト追跡データで確認されました。 1

イスラエルの有力紙『エルサレム・ポスト』は、このフライトがイランからの報復攻撃に備え、首相や大統領の移動手段を安全な場所に確保するための措置であったと報じています。過去の緊張が高まった際にも、同様の退避が行われた実績がありました。

首相の所在と両政府の公式対応

軍事衝突という非常事態の中、イスラエル、ギリシャ両政府はそれぞれ対応に追われました。

イスラエル側の動向:首相府は噂を否定

イスラエル政府はネタニヤフ首相の具体的な所在を公式に発表していません。しかし、首相官邸は13日夜、異例の声明を発表。「根拠のない偽の噂とは異なり、首相は体調も万全であり、現在家族と安息日の夕食を共にしている」と強調し、首相が健康問題や所在不明の状態にないことを強く示唆しました。 5

また、同日夜にネタニヤフ首相が米国のトランプ大統領と電話会談を行ったとの報道もあり、 3 首相が国内に留まり、引き続き指揮を執っている状況がうかがえます。

ギリシャ側の動向:自国民保護を優先

ギリシャ政府も、ネタニヤフ首相の入国について公式に言及することは避けました。しかし、政府は情勢の悪化に迅速に反応。13日朝には首相主宰の国家安全保障会議(KYSEA)を緊急招集し、イスラエルに滞在する自国民に対して「直ちに安全な場所に退避するように」との勧告を出しました。

首相入国の噂については、後述するように政府高官が非公式に否定しており、事実上の火消しに動いています。 10

なぜ専用機は飛んだのか?現地メディアの報道

両国の信頼できるメディアは、この専用機のフライトについて客観的な情報を提供しています。

  • イスラエルメディア:イスラエルのテレビ局「第12チャンネル」や『エルサレム・ポスト』は、「専用機がアテネに着陸した」という事実を速報しました。 19 しかし、これらはあくまで「専用機の移動」を伝えたものであり、首相本人の搭乗については明言していません。
  • ギリシャメディア:ギリシャの主要紙『エトノス』は政府関係者の話として、「この政府機は在アテネ・イスラエル大使を乗せてきたもので、他に乗客はいなかった」と明確に報道しました。これは、イスラエルの空港が閉鎖されたことに伴う特別措置であったと説明されています。

噂の拡散:SNSが果たした役割と誤情報

今回の「首相ギリシャ入国説」は、SNS上で急速に拡散しました。特にイランとギリシャからの投稿が、その火付け役となりました。

イラン側からの情報発信

イランの国営通信IRNAは13日、「『ベンヤミン・ネタニヤフ』がギリシャへ逃亡」と題する速報を配信しました。 27 イスラエルメディアの報道を引用しつつ、「首相が重警護の下で国外退避した」と強調する内容で、イラン側の政治的思惑から情報が誇張されて拡散したと考えられます。

ギリシャ国内での憶測

ギリシャ国内のSNSでは、「専用機が来たが、本人は来ているのか?」といった憶測が飛び交いました。一部では、国際刑事裁判所(ICC)がネタニヤフ首相に発行している逮捕状に言及し、「ギリシャ当局は逮捕状を執行すべきでは」といった投稿も見られましたが、 7 ギリシャ政府がこれに応じる可能性は極めて低いと見られており、憶測の域を出ませんでした。

結論:事実と誤情報の整理・検証

これまでに集まった情報を整理し、確認された事実と誤情報をまとめます。

  • 【事実】イスラエルは2025年6月13日にイランを大規模空爆しました。
  • 【事実】イスラエル政府専用機「ウィング・オブ・シオン」が同日、アテネに着陸しました。 12
  • 【事実】この専用機は、イスラエルの駐ギリシャ大使を移送するために使用されました。
  • 【未確認/否定的】ネタニヤフ首相本人がこの専用機に搭乗し、ギリシャに入国したという情報に確証はありません。両国政府や信頼できるメディアはこれを否定しています。
  • 【誤情報】イラン国営メディアなどが報じた「ネタニヤフ首相逃亡説」は、事実を誇張または曲解した信憑性の低い情報と判断されます。 2

以上の検証から、今回の件は「イスラエル政府専用機がギリシャに飛来した」という事実を基に、SNS上で「ネタニヤフ首相が逃亡した」という誤情報が膨らんだケースと結論付けられます。信頼性の高い情報源を精査する限り、ネタニヤフ首相はイスラエル国内に留まり、指導を続けている可能性が極めて高いと言えるでしょう。

ネタニヤフ首相がギリシャ逃亡との噂の真偽:まとめ

2025年6月13日のイスラエルによるイラン空爆後、ネタニヤフ首相がギリシャへ逃れたとの噂がSNSや一部報道で拡散されましたが、6月14日16時時点での調査によれば、この情報は事実ではない可能性が極めて高いと判断されます。

噂の根拠となったのは、イスラエル政府専用機「ウィング・オブ・シオン」がアテネに飛来したという事実ですが、これはテルアビブ空港の閉鎖を受けて在ギリシャ・イスラエル大使を送還する目的だったと、ギリシャ政府筋が明かしています。ネタニヤフ氏本人の搭乗は確認されておらず、イスラエル首相府も「首相は体調も良好で国内にとどまっている」との声明を発表しました。

イラン国営メディアは「国外逃亡」と報じましたが、これは情報操作の可能性があり、信頼性に欠ける誇張とみられます。ギリシャ政府もこの件に関する公式声明は控えつつ、現地報道は「首相は来ていない」と明確に否定。結論として、専用機の飛来は事実だが、ネタニヤフ首相がギリシャに入国したとの確証は一切なく、噂は誤情報に基づくと整理できます。


参考文献:引用文献

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