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6月7日に銃撃されたコロンビア大統領選候補者のミゲル・ウリベ氏とは

ミゲル・ウリベ・ターバイ(Miguel Uribe Turbay)氏:銃撃事件の最新情報と政治的背景

銃撃事件の概要(2025年6月)

2025年6月7日、コロンビアの上院議員であり、次期大統領選挙の有力候補と目されるミゲル・ウリベ・ターバイ氏(39歳 Miguel Uribe Turbay)が、首都ボゴタで選挙キャンペーン中に銃撃される事件が発生しました。 1 2 同氏は公園で支持者と交流中、背後から複数の武装した犯人に襲われました。少なくとも2発の銃弾を受け、そのうち1発は頭部に命中したと報じられています。 3 4

襲撃直後、ウリベ氏は緊急搬送され、首都ボゴタの病院で集中治療を受ける重体です。頭部に銃弾が残り、気管挿管された状態で、「文字通り生死の境をさまよっている」と妻がSNSで投稿したと伝えられています。 5 6

襲撃現場では、ウリベ氏の警護要員と犯人との間で銃撃戦となり、周囲にいた市民2名も負傷しました。 7 当局は15歳の少年を容疑者として現場で逮捕しました。 8 この手口は、かつての麻薬王パブロ・エスコバルが少年を殺し屋として利用した時代を思い起こさせると報じられ、コロンビア社会に衝撃を与えています。 9

治安当局は「民主主義と自由に対する許し難い攻撃だ」と非難しています。情報提供者に対し、日本円で約7,500万円に相当する懸賞金を提示すると発表しました。 10 国防大臣は、事件の早期解明にあらゆる能力を投入するよう指示し、武力による威嚇行為を断じて容認しないと強調しました。 11 12 ウリベ氏は現在、より設備の整った病院で緊急手術を受けており、家族は国民に対し回復を祈る「祈りの連鎖」への参加を呼びかけています。 13

ウリベ氏の政治的立場と主張

ミゲル・ウリベ・ターバイ氏は、右派与党「民主センター党」に所属する上院議員です。過去にはボゴタ市議会議長などを務め、若くしてキャリアを積んできました。 14

治安政策:強硬路線の復活を提唱

ウリベ氏は治安対策を最重視するタカ派の政治家です。グスタボ・ペトロ現政権が進める和平路線や寛容な政策を強く批判しています。「コロンビアは再び戦争状態にある。これは本来なら回避できたはずの戦争だ」と述べ、ペトロ政権が武装勢力に不当な譲歩をした結果だと非難しています。 15

自身の幼少期に麻薬テロで母親を亡くした経験から、「許すことは決めたが、決して忘れない」と強調しています。 17, 18 そして、国を再び恐怖から解放するため、元大統領アルバロ・ウリベ時代の「民主的治安政策」を復活させる必要があると訴えています。 19 具体的な公約として、軍・警察予算の増額、特殊部隊の増強、麻薬取締りのための農薬空中散布の再開などを掲げています。 20, 21, 22 ELN(民族解放軍)ゲリラなどとの和平対話にも、現状では断固反対の姿勢です。 23

経済政策:民間主導の成長を重視

経済政策においても、ウリベ氏はペトロ政権と明確に一線を画しています。ペトロ大統領が掲げる急進的な社会改革に対し、「国を破壊する危険な政策だ」として強く反対してきました。2023年末に労働法改正案が議会で否決された際には、「我々の戦いが50万の雇用を守った」と勝利を宣言しています。 24

また、左派政権の環境重視路線についても、「この政府による石油産業への迫害の結果、輸出額が急減した」と批判しています。その上で、「2026年には新たな油田探査契約の締結や減税を通じて、石油・ガス産業を立て直す」と公約しています。 25, 26 ウリベ氏は「最良の社会政策は雇用創出だ」と訴え、民間活力を生かした経済成長を重視する立場です。 27

社会的価値観とペトロ政権への姿勢

社会的価値観の面では、ウリベ氏は伝統的な保守の色彩が強い人物です。人工妊娠中絶の合法化については、「私は中絶に賛成できない」と明言しています。 28 2022年に憲法裁判所が中絶を大幅に合法化した際も、「こうした重大問題は議会で議論すべきだ」と慎重な姿勢を示しました。 29

ペトロ政権に対しては、国内でも屈指の強硬な反対派として知られています。ペトロ大統領を「国を破壊する危険人物だ」と評し、「民主主義への脅威」と位置づけています。 30 最近の汚職疑惑についても、大統領自身の関与の可能性を指摘し、徹底的な究明を主張しています。 31

各界の反応とコロンビア社会への影響

ウリベ氏銃撃事件に対し、コロンビアの政界からは与野党を超えて一斉に非難と悲しみの声が上がりました。

政界からの非難と連帯の声

ペトロ大統領はSNS上で「命を尊重せよ。コロンビアは自らの息子を殺してはならない」と強い言葉で暴力を非難しました。 32 また、「ウリベ家とターバイ家に心から連帯を示す」と、野党議員であるウリベ氏一家への見舞いのメッセージを発信しています。 33 政府も公式声明で、この事件を「コロンビアの民主主義と言論の自由への攻撃」と断じ、断固たる姿勢で臨むと表明しました。 34

ウリベ氏が所属する民主センター党の創設者であるアルバロ・ウリベ元大統領も、「祖国の希望である指導者の命が狙われた」と投稿し、回復を祈る言葉を述べました。 35 イバン・ドゥケ前大統領も「卑劣な暴力を断固非難する」とコメントしています。 36

一方、ウリベ氏の同僚であるマリア・フェルナンダ・カバル上院議員は、事件の背景に「ペトロ政権が煽ってきた憎悪の空気がある」と述べ、政府を痛烈に批判しました。 37 中道派のクラウディア・ロペス前ボゴタ市長や、与党左派のグスタボ・ボリーバル前上院議員など、立場を超えて多くの政治家が事件を非難し、警護体制の強化を求めています。 38, 39, 40, 41

国民世論とメディアの論調

国民世論も、概ねウリベ氏への同情と事件への怒りで一致しています。特に、ウリベ氏の母親が過去に麻薬組織に殺害された経緯から、「母親の命を奪われた彼に、今度は銃口が向けられるとは」と嘆く声がSNS上で多数見られました。 42 ノーベル平和賞受賞者であるフアン・マヌエル・サントス元大統領も、「民主主義を守ろう」と国民に呼びかけています。 43

元大統領候補のイングリッド・ベタンクール氏は、襲撃の責任の一端はペトロ政権にあると公言しました。 44 「ペトロ大統領は野党に対し直接的な嫌がらせを行っており、反対派が安心して政治活動を行える保証がない」と述べ、政権の姿勢を批判しています。 45, 46, 47

ウリベ氏の公式Xアカウントには、夫人が代筆で「彼は今まさに命をかけて闘っています」と投稿しました。これに対し、多くの激励のコメントが寄せられています。ウリベ氏の政治路線に批判的な人々からも、「いかなる思想の違いも、暴力で命を奪うことは決して正当化できない」との声が上がっています。 48, 49

参考文献:引用文献

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