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ロサンゼルスで移民取り締まりと抗議激化、トランプ政権が州兵派遣へ(6月8日時点)

ロサンゼルスで移民取り締まりと抗議激化、トランプ政権が州兵派遣へ(6月8日時点の情報)

2025年6月6日の朝、米カリフォルニア州ロサンゼルスで大規模な移民の取り締まり(一斉摘発)が開始されました。この強硬な作戦は、市内各所で軍事作戦さながらの態勢で実施され、数十人規模の逮捕者が出ました。 2, 3 これに反発した市民や移民擁護団体は即座に抗議行動を起こし、6日から連日デモや治安部隊との衝突が発生する事態となっています。 4, 5

トランプ大統領は、この抗議の広がりを「反乱」とみなし、国家警備隊(州兵)2,000名をロサンゼルスに派遣する決定を下しました。 6, 7 本稿では、取り締まり開始から州兵派遣決定に至るまでの経緯、各関係者の反応、州兵派遣の法的根拠とその異例性、抗議デモの具体的な状況、そして今後の見通しについて、最新情報を基に詳しく報告します。

事件の時系列

2025年6月6日の朝から6月8日現在までの主要な出来事を時系列でまとめます。

6月6日 (金) 朝
ロサンゼルス市内各所で、連邦当局(ICE:移民・関税執行局、DHS:国土安全保障省など)が移民の一斉摘発作戦を開始。武装した要員が市内7か所以上に突入し、少なくとも44人を不法滞在などの容疑で行政逮捕しました。 8
6月6日 (金) 午後~夜
摘発への反発が広がり、数百人規模の抗議者がロサンゼルス中心部の連邦ビル前に集結。 10 一部が建物の出入り口を封鎖し、ICE車両の通行を妨害。ロサンゼルス市警(LAPD)が「不法集会」を宣言し、催涙ガスなどを使用して強制排除にあたりました。
6月7日 (土) 朝~午後
ロサンゼルス郊外のパラマウント市で、連邦当局が追加の摘発作戦を実施。 13 これに対し、現地で再び抗議デモが勃発し、規模は約400人に拡大しました。 14
6月7日 (土) 夜
抗議の一部が過激化。警官隊へ石や火炎瓶が投擲され、車両が放火される事態に発展。 15, 16, 17 郡保安局が非常線を張り、催涙ガス弾などでデモ隊を制圧。この混乱を受け、ホワイトハウスがカリフォルニア州兵2,000名のロサンゼルス派遣を発表しました。
6月8日 (日) 現在
ロサンゼルス市内の抗議行動は小康状態。しかし、抗議団体はデモの継続を呼びかけており、予断を許さない状況です。州兵部隊は日曜中に現地に展開する予定と報じられています。

各関係者の反応と主張

この一連の出来事に対し、連邦政府、州・市当局、そして市民団体から、それぞれ異なる立場からの声明や主張が発表されています。

トランプ政権・連邦当局の対応

トランプ政権は、今回の移民摘発とそれに続く騒乱に対し、一貫して強硬な姿勢を示しています。ホワイトハウスは公式声明で、ロサンゼルスの抗議者を「暴力的な暴徒」と断じ、彼らが「連邦法執行官を襲撃した」と主張しました。 18

トランプ大統領自身もSNSで、カリフォルニア州のニューサム知事やロサンゼルスのバス市長を名指しで批判。「職務を果たさないなら連邦政府が問題を解決する」と投稿し、地元当局の対応を「仕事放棄」だと断じました。 19 そして、大統領権限で州兵2,000名の即時動員を命じました。この措置は、一連の混乱を「米国に対する一種の反乱行為」とみなし、「連邦政府職員の安全確保」を目的として正当化されています。

J.D.ヴァンス副大統領やスティーブン・ミラー大統領補佐官といった政権高官も、抗議者を「反乱分子(insurrectionists)」と呼び、強く非難しています。 20 FBI(連邦捜査局)やDHSも、「法と秩序を貫徹する」として強硬な姿勢を崩していません。

カリフォルニア州政府・ロサンゼルス市の反応

カリフォルニア州およびロサンゼルス市の当局者は、連邦政府の強硬な措置に強く反発しています。ロサンゼルス市のカレン・バス市長は、「このような作戦は我々のコミュニティに恐怖を植え付け、市の安全の基本原則を破壊するものだ」と表明し、「容認できない」と厳しく批判しました。 21

ギャビン・ニューサム州知事も、「今回の作戦は残酷で無秩序だ」と非難。さらに、連邦政府による州兵派遣の決定については、「意図的に挑発的で、緊張をエスカレートさせるだけだ」と糾弾しました。 22 州政府は、地元当局で治安維持は可能であり、州兵の派遣は不要であるとの立場です。

移民擁護団体・市民の反応

移民コミュニティを支援する団体や市民も、連邦当局の動きに強い危機感を表明しています。南カリフォルニア・アメリカ自由人権協会(ACLU)は、今回の一連の摘発を「圧政的で悪質な準軍事的作戦だ」と激しく非難しました。

現場を監視した人権団体によれば、連邦エージェントは重武装で、令状の提示もなく急襲し、人々を「誘拐」するように連行したと証言しています。移民支援団体CHIRLAは、市内の複数の労働現場が狙い撃ちにされたと報告しています。逮捕された人々の家族や友人は、行方も分からず不安な時を過ごしており、拘束者の処遇についても懸念の声が上がっています。

州兵派遣の法的根拠と異例性

トランプ大統領による州兵の派遣は、法的には米国法典第10編に基づく大統領権限の発動とされています。具体的には、米連邦法で定められた「反乱法」の規定が根拠です。 23 これは、「反乱またはその危険がある場合」に、大統領が州兵を連邦の任務に就かせることを認めるものです。

しかし、州知事の要請なしに州兵を一方的に派遣するのは、近年では極めて異例の事態です。通常、州兵の国内配備は各州知事の権限下で行われます。過去に連邦政府が州兵を動員した例としては1992年のロサンゼルス暴動がありますが、この時は州知事の要請に基づくものでした。 24

州政府が明確に反対しているにもかかわらず、大統領が州兵を動員して派遣するのは、近年の民主国家では前例がほとんどない措置だと専門家は指摘しています。法学者や市民権団体からは、この動きに強い懸念が表明されており、州対連邦の法廷闘争に発展する可能性も指摘されています。

抗議デモと衝突の具体的状況

6月6日から始まった抗議デモは、市内中心部および郊外で断続的に発生し、時に過激化しました。初日のロサンゼルス中心部では、数百人規模の市民が連邦ビル前に集まり、一部は建物の出入り口を封鎖しました。LAPDの機動隊が投入され、催涙ガスやゴム弾を使用して群衆を排除しました。

2日目には、郊外のパラマウント市で抗議が拡大しました。約400人の群衆が集まり、一部は警官隊に向けて石や火炎瓶を投擲し、車両に放火するなどの暴徒化が見られました。郡保安局は非常事態を宣言し、催涙弾や音響閃光弾などでデモ隊を制圧しました。この混乱は近隣のコンプトン市にも飛び火しました。一連の抗議行動は、一時的に小規模な暴動の様相を呈しました。

地元住民や当事者の声

現地の住民や当事者たちは、突然の出来事に大きな衝撃と怒り、不安を感じています。移民コミュニティが多く暮らすロサンゼルスでは、多くの人々が「日々真面目に働いている人々が標的にされている」と感じています。抗議に参加したある兄弟は、「連れて行かれているのは勤勉な人々ばかりだ。犯罪者ではなく、生計を立てるために働く庶民が怯えて暮らさなければならないのは悲しい」と語りました。

また、労働組合も抗議に参加しており、カリフォルニア州労働組合連盟の議長が現場で逮捕され、負傷する事態も発生しました。労働組合からは「労働者の尊厳を踏みにじる強権的な手法だ」との非難の声が上がっています。

現在の状況と今後の見通し

6月8日現在、ロサンゼルス市内は表面的には落ち着きを取り戻しつつあります。しかし、緊張状態は続いており、治安当局は警戒を続けています。抗議グループはSNSなどを通じて、さらなる抗議集会の継続を呼びかけています。

トランプ政権が発表した州兵2,000名は、48時間以内に現地に到着する予定です。部隊は当面、連邦施設の警護任務に従事する見込みですが、1992年のロサンゼルス暴動以来となる州兵の展開に、住民からは不安の声も上がっています。今後の見通しは不透明です。州政府は連邦政府の動きに反発し、法的措置も辞さない構えです。州兵の派遣が、事態を鎮静化させるのか、あるいは更なる反発を招くのか、予断を許さない状況が続きます。

今回の事態は、移民政策をめぐるアメリカ国内の深い対立を改めて浮き彫りにしました。今後、州兵が本格的に展開される中で、再び暴力的な衝突が起こらないことを願いつつ、地元コミュニティと当局の冷静な対応が求められています。

参考文献:引用文献

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